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資本系人材会社の消滅を検証する

資本系人材会社、既に死語かもしれないが

shihonkei

資本系の人材会社、この言葉を聞いて、「メイツやエクセルスタッフやキャプランのことね」と理解できる人は人材業界の通や古株です。資本系の人材会社とは、大手の総合商社やメーカーなどの資本で設立された企業です。
自社グループへ派遣社員を斡旋するために設立された会社が多く、従来グループ内の派遣比率が高い企業が多い(多かった)と記憶しています。

資本系人材会社には、三菱商事系のメイツ(リクルートが買収)、三井物産系の物産ヒューマンリソース(パソナが買収)、伊藤忠商事系のキャプラン(パソナが買収)、住友商事系の住商アドミサービス(パソナが買収)、丸紅とみずほ系のアヴァンティスタッフ(ヒューリックが買収)、パナソニック系のエクセルスタッフ(テンプが買収)などがあり、もうすでに消滅、統合、買収されてしまった会社も多いです。

旭化成系のアミダス、全日空系のANAビジネスソリューション、商船三井系の商船三井キャリアサポート、東レ系の東レエンタープライズなどは資本系人材会社でも存続している会社もありますが、グループ全社戦略からは周辺領域へ外れていっている会社が多いと思います。

グループ企業派遣8割規制の衝撃

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さて、これらの資本系人材会社が何故消滅しているのか?については、人材派遣法改正、特に「グループ企業派遣の8割規制」が原因の一つとされています。
グループ企業派遣の8割規制とは厚労省の派遣法関連サイトに詳しく載っていますが、派遣会社の派遣先をグループ内派遣を8割以下に抑えなければならないという規制です。人材業界の方で派遣法で「専ら派遣」を禁止していますが、グループ派遣80%以上の会社は「専ら派遣」に該当するという判断となりました。

派遣元事業主・派遣先の皆様

「派遣会社と同一グループ内の事業主が派遣先の大半を占めるような場合は、派遣会社が本来果たすべき労働力需給調整機能としての役割が果たされないことから、派遣会社がそのグループ企業に派遣する割合は全体の8割以下に制限されます。」

先にも触れましたが、そもそも資本系人材会社というのは、グループ内へ人材派遣することを目的に設立されており、この規制によって派遣子会社を維持するメリットを感じなくなった会社が、独立系人材会社への事業売却を行っている、というのが一般的に語られるストーリーです。

ただ、本当にこの「8割規制」だけが問題なのでしょうか?
これは逆に読むと2割グループ外への派遣ができれば8割未満のグループ内派遣が許されるということです。「2割くらいは外販しろよ!」と突っ込みたくなった方も多いと思います。

資本系人材会社が撤退する2つの理由

shihon tettai

私は資本系人材会社の撤退理由は、8割規制に加えて、2つの理由があると考えています。

(1)周辺事業(元々ノンコア事業だった)
(2)運営費高騰(オペレーションコスト、集客コスト)

まず、「(1)周辺事業(元々ノンコア事業だった)」です。
総合商社や金融機関においては、元来人材ビジネスを子会社で開始した時から既にノンコア事業ではあったものの、人材派遣市場の成長に伴い、事業単体としての成長が期待できること、グループ内で資金を回せること、更には人事本部や関連事業部の上りポストの確保という様々な背景があり、人材子会社が維持されてきました。

しかしながら、8割規制だけではなく、右肩上がりだった人材派遣市場が踊り場を迎えるとともに、パソナ、テンプスタッフ、リクルートスタッフィングといった専業会社との競争が厳しくなりました。そうなると、資本系人材会社の親会社は、もはや周辺事業且つ成長性の見込めない人材事業を維持するよりも、専業会社に売却した方が得策と考えて事業撤退が相次いだものと考えられます。

次に、「(2)運営費高騰(オペレーションコスト、集客コスト)」です。
派遣会社のコスト内訳は、①派遣スタッフ賃金、②社会保険料、③販売管理費の3つです。
①派遣スタッフ賃金は、リクルートジョブズが毎月発表している「派遣スタッフ募集時平均時給調査」を確認すると、三大都市圏で約1600円と過去最高を記録しています。リーマンショック後に一度時給は下がりましたが、基本的には過去より上昇傾向にあります。①派遣スタッフ賃金が上がると、②社会保険料も上がります。
派遣社員の時給単価が上がっても、企業の支払う派遣単価は極端に上がらないこともあり、従来は非常に高い収益率を誇った派遣ビジネスは、低収益ビジネス転換してしまいました。

また、③販売管理費については、登録者の集客費用、営業・コーディネーターを含む本部人件費、派遣スタッフの労務管理や請求処理などのシステム費用、法規制変更に伴う法務・契約費用などで構成されます。
集客費用は広告宣伝費用と捉えてしまってよいのですが、PPCやAdwordsの求人や派遣関連キーワードはビックワード化しており、スタッフ獲得コストは上昇の一途を辿っています。また、受発注や請求処理のためのシステム投資もビジネスの大規模化に伴い、巨額の投資が必要となっています。さらには、度重なる派遣法の改正に基づき、全クライアントとの派遣、日々紹介、請負などの契約スキームの変更が発生し、プロフィットは同じであっても、運営コストが嵩張る状況が続いています。

残された資本系人材会社の現状

kako3nen

このような背景があり、資本系人材会社はどんどん撤退し、今や数えるくらいになってしまった印象です。
現在まだ存在する資本系人材会社も利益率が1%台若しくはそれ以下の会社が多く、単体で生き残ることはもはや難しく、親会社の意向次第では消滅していく可能性も感じさせます。参考資料(比較)

riekiritu

但し、大手の独立系人材派遣会社と統合すると、運営費用(本部人件費やスタッフ集客費用、システム投資)が合理化され、もう少し利益が出そうな気がします。大手派遣会社としても、継続的な派遣ニーズのある大企業アカウントを取り込むことができるため、積極的なラブコールは続いていると考えます。

ただ、これは逆読みすると、買収目的はアカウントと派遣スタッフの獲得だけであり、買収後は被買収会社の本部スタッフには厳しい対応が待っているかもしれません。メイツ、物産ヒューマンリソース、キャプランの社員が買収・統合後にどうなったか?を思い返すと、現在これらの資本系人材会社にお勤めの方にとっては必ずしも買収はウェルカムでは無いようにも感じます。

なお、これらの会社の中ではニッセイ・ビジネス・サービス社は大変高い利益率を残されており、どういったビジネスモデルやフィー体系なのか?興味深く感じました。何かご存知の方がいれば教えてください。

 

 

 

 

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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