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ヤフーが求人広告を無料化、リブセンスは値上げ、くるくる系紹介会社は窮地に?

広告型vs成功報酬+お祝い金型

さて、今日は業界ネタです。
当社でも事業拡大に伴って増員を検討中、そこで久々に求人媒体の動向を確認しました。
時々確認すると事件が起こっているので興味深いです。

結論から申し上げると、今回は凄く面白かったです。
リブセンスが値上げ、ヤフーは無料化に踏み切るなど、ダイナミックな変化がありました。

1.広告型vs成功報酬+お祝い金型
.無料型vs有料型 ”ヤフーが無料求人広告をスタート”

従来求人媒体は広告型の課金を基本としています。リクナビ、マイナビ、エンジャパンなど有名な転職サイトはいずれも広告課金型のビジネスモデルを採用しています。価格パッケージは掲載期間と広告枠の大きさや上位表示、周辺コンテンツの内容で決まります。
最大手のリクナビNEXTの通常価格はこんな感じです。代理店が時々キャンペーンやって安くなります。

企画名 掲載期間 通常価格
N5L 4週間 180万円
N5 2週間 144万円
N4L 4週間 100万円
N4 2週間 80万円
N3L 4週間 55万円
N3 2週間 44万円
N2L 4週間 35万円
N2 2週間 28万円
N1L 4週間 20万円
N1 2週間 18万円

一方で成功報酬型ですが、リブセンスがジョブセンス(バイト求人広告)に成功報酬型を導入したころから、成功課金型の媒体も増えてきました。
このモデルは「お祝い金・お礼金」という求職者向けのインセンティブシステムを導入することで求職者の集客を実現しています。
またこのお祝い金システムは一種の報告制度になっており、企業ー求職者の採用確認が双方から可能になり、悪質な企業(報告しない)による”タダ採用”をプロテクトする機能を果たしています。
HRNさんの記事「村上太一 リブセンス代表取締役社長~お祝い金の導入で成功報酬型人材サービスを確立」がかなり分かりやすいです
なお、現在この成功報酬型+お祝い金システムは、マイベストジョブ、バイトリッチで同様のモデルが展開されています。
また、応募課金型ではマイナビバイト、ショットワークス(ヤフー系のインディバルが運営)などが、求人応募1件ごとに課金するフィーモデルを展開しています。ちなみにマイナビは応募1件8000円だそうです。

リブセンス”ジョブセンス”の値上げについて

ところで今回ジョブセンスを確認したら、色々と変更がありました。
① ジョブセンス(アルバイト)の採用単価が30,000円から95,000円へ値上げ
② ジョブセンスリンク(中途採用)の採用単価は、提示年収の20%

これが中途採用の新常識 初期費用掲載費用すべて0円

思い切って値上げに踏み切ったリブセンス、僕はバイトは失敗、中途はいい線狙っているなーと感じました。(ちなみにリブセンス社と特に利害関係はありません。)
まず、バイト採用については1名@95,000円ということですが、これはanやタウンワーク、フロムエーなどの有力なバイト求人媒体に掲載できる価格帯となります。代理店さんに聞いてみたらフロムエーの関東版では「検索結果上位表示+特集参画/2週間、交渉次第でcreativeも一部お願いできる」で15万弱程度、2,3人のバイト募集であればだいたいこれで成功しているようです。
広告は何名採用しても固定額であり、採用人数によっては「成功報酬だが総額では割高」となることがあり得ます。ジョブセンスは成功報酬で且つ「安い」ので活用していた企業が離れていくのではないかと予想します。
(なんかバイト1人に95,000円ってアウトな感じだよね、70,000円くらいだとギリギリアウト、50,000円くらいだとギリギリセーフかもしれない、根拠は何もないけれど。)

次にジョブセンスリンク(中途採用)ですが、成功報酬は「提示年収の20%」です。年収600万の人を採用すると120万円です。
広告としては高すぎる、一瞬プライシングをミスったのではないか?と感じました。ただ、この「20%という価格設定」絶妙だったよね(過去形)。それは今から説明します。

2.jpegリブセンスよりも早く成功報酬型の中途採用サイトを展開しているI&Gパートナーズの「Green」は成功報酬30万円~提供されています。
「ちくしょう。転職だ!」シリーズの広告はなかなか秀逸です。
ビジネスモデルだけを捉えると、ジョブセンスリンクのベンチマークは「Green」になります。価格帯は30万円と年収×20%ですので、年収150万円以上の社員を採用する場合(ほとんどのケース)は、ジョブセンスは割高になります。
転職サイトの歴史もUIもGreenに一日の長があり、これだけ見ると、何でこの価格設定にしたのだろう?と首をかしげてしまいます。
但し、彼らが意識しているのは成功報酬型求人媒体ではなく、くるくるマッチング系人材紹介会社だと考えると、20%というフィー設定は絶妙なセンスを感じるのです。

現在、人材紹介会社は概ね「25-35%」というフィーでサービスを提供しています。
人材紹介会社の活用メリットを整理してみましょう。
求人広告で採用を行う場合、書類選考や合否通知などのオペレーションは全て求人企業で行わなくてはいけません。私も以前採用担当をやってましたが、1ヵ月に100名近い応募者があり、書類選考と合否通知、面接設定など本当に膨大なボリュームの作業が発生しました。
アシスタント無ではとても回せないレベルです。「私は忙しいから、あなたがやって!」と会社のオーナーに書類選考を丸投げしてどうにか面接などに対応していました。(今考えるとヤバイ発言ですね。。)

その時初めてユーザー視点で人材紹介会社(私と相性の良い)の価値を見直したのですが、①一定の水準で書類選考を行う、②インタビューを行いカルチャーフィットしない人は除外する、③応募意思も一定水準以上で条件が合えば入社OK、④面接日程などの調整お願いできる、というのは多少なりとも30%の手数料を支払う価値を感じました。

但し、全ての人材紹介会社に満足しているのか?といえばそんなことはありませんでした。(この経験は反面教師にしています)
私はお取引きを途中でお断りしたのですが、人材紹介会社の中には、とりあえず何でもかんでも推薦されるエージェント・会社も残念ながらありました。「職務要件読んでよ!頼むぜ!」というレベルの推薦も多く、「書類選考しているのかな?インタビューで何を確認されているのだろうか?」に始まり、「面接にいらっしゃったものの当社のことは殆どご存じないのですね・・・」で締めくくられ、「このサービスに手数料30%ってどうなんだ?」と不安に感じることもありました。

さて、翻ってジョブセンスの付加価値って何?と考えると「集客」以外は何一つありません。
成功報酬というフィー体系も人材紹介会社と同じです。書類審査も日程調整も全て企業人事でハンドリングしなければいけません。
但し、上述のような要件に合っていなくてもとにかく推薦される”くるくる系紹介会社”と比較すると、「まぁどっちも同じようなものだね?多少フィー安いよね、これで採用で来たら採用コスト抑制できるよね」という発想に陥ることがあります。

恐らくジョブセンスの20%はそのギリギリラインを狙った絶妙なプライシングだったのだと思います。くるくる系人材紹介は近い将来WEB媒体に置き換えられていく、そんな感覚を覚えました。

ヤフーが転職サービス(求人広告)も無料化へ

キュリア 原稿掲載についてそんな中で本日の「ヤフー、ECに続き転職サービスも“無料化”–求人情報や成功報酬」、なんとヤフーが「広告費も成功報酬も無料」で求人広告事業のテコ入れを行いました。子会社のインデュバルが運営するキュリアという媒体が大胆な戦略に打って出ています。最も2014年3月までのキャンペーンでその後は有料化されてしまうようですが。

無料プラン 有料プラン
価格 0円
※取材回答が当社基準を満たしている場合
12週間
5万円
企業情報
(取材情報含む)
求人原稿
(PR文、写真掲載)
1職種 5職種
クライアント専用管理画面
(応募者管理、原稿作成、各種コンタクト機能)
応募候補者プッシュ機能
(応募促進機能)
スカウト機能
月10通

ヤフーの「成功報酬も無料」の広告モデルはこれまでの成功報酬型の転職サイト事業の根本を変えるインパクトがあります。無料ですよ、無料。
これを受けてGreenやリブセンスが意識した絶妙なプライシングは過去のものになり、軌道修正が必要になりそうです。またくるくる系紹介会社は付加価値って何だろうか?ますます存在価値を見出すことが難しくなってきそうです。無料広告よりも品質が悪いサービスはもはや買い手が付きません。

その内話題に上げようと思いますが、今回のヤフーのチャレンジはリクルートの牙城を崩すための序章です。リクナビ成功報酬化や無料化もそろそろ現実味を帯びてきましたね。その内コラムにします。


人材業界決算, リクルート決算, 人材紹介,人材派遣,決算まとめ

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三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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