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社長選び、アンケートで

1984年に表面処理加工を手がけるユニックス(大阪府東大阪市)を創業しました。大手電機メーカーの研究所で働いてから75年に独立し、ポリウレタンの表面処理技術などの事業を拡大してきました。30年以上にわたって経営をしてきましたが、2016年に当社の従業員だった町田泰久氏に社長を譲り、事業承継を進めました。
もともとは親族内承継を考えていました。私には娘が2人います。長女は結婚して大阪を離れていましたが、次女は税理士で当社の取締役です。ただ、本人は会社を継ぐ気がありません。
(中略)
 事業承継で最も大事なことは従業員からの信頼です。(中略)私が社長を決めるのではなく、社員が社長を選ぶ方法を考えました。自分たちが選んだという意識があれば、困難に直面しても社長と一緒に乗り越えようと思ってくれるはずだからです。
 そこで約10人の従業員を対象にアンケートを実施しました。今後どんな会社にしていきたいかなど、10項目ほどの質問を作りました。私が引退する時に、誰にこの会社を継いでもらいたいか、自薦・他薦問わずに実名で記入してもらいました。結果として、ほぼ全員が町田社長の名前を書きました。
(日本経済新聞 9月22日)

 小規模な企業ほど社長に人望が問われるが、人望は一朝にして培われない。業績の好調時、不調時のそれぞれにどのように立ち居振舞ったか。中小企業では本性を隠せず、人柄が丸見えになってしまう。
リーダーシップを発揮する場合、それが私心に由来すると見透かされたら、たとえ成果を出しても人望は集まらない。まして社内政治に走るような行為は論外である。
その意味で、社長の親族に後継者が不在の場合、実力と人望を兼ね備えた人を次期経営者に起用することが望ましい。金融機関や取引先から迎え入れるケースも多いが、社内に適任者がいるのなら社内から起用したほうが社員の士気にもプラスである。
ただ、社長が保有する株式の買い取りという難題も、昨今は事業承継ファンドの活用でクリヤできるようになった。事業承継ファンドは民間ファンドが主体だが、公的ファンドも運用されている。
 たとえば東京都は事業承継ファンド「TOKYOファンド」(運営事業者・日本プライベートエクイティ)に25億円を拠出し、公的ネットワークを活用して事業承継を支援している。
支援対象は、年商1億円前後~30億円、従業員10名以上がひとつの目安という。
 事業承継にはM&Aも有力な手段として普及しているが、社内に後継者が存在するのなら他社の傘下に収まる必要はない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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