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美食大国いつまで? 揺らぐ調理師の厚み 現状なら6割減も 担い手確保へ

美食大国、日本の将来に影が差している。担い手である調理師の免許交付数が2023年度までの10年間で4割減り、一層減る可能性もある。長期間の修業や低賃金といった厳しい働き方が課題だ。料理人が競うからこそ味も値段も磨かれる。25年後も世界に冠たる地位を保つべく厨房は変わり始めた。
9月25日、「ミシュランガイド東京2026」の発表会が都内で開かれた。東京の星付きレストランは160軒と19年連続世界一。同ガイド責任者グウェンダル・プレネック氏は「東京が世界屈指の美食都市であることを証明した」と絶賛した。
(中略)
 この競争力の源泉である人材の厚みが揺らいでいる。
 厚生労働省によると23年度の調理師免許交付数は約2 万4000人と10年前比38・4%減った。08~23年度の平均減少率は年3・7%で、このままなら50年度には8000人台になる計算だ。東京のミシュランの星付き店数も26年は最多の12年から35%減り、2位のパリが迫る。
 調理師免許は調理技術と栄養学、食品衛生などの専門知識を持つと証明する専門資格。免許なしでも飲食店で働けるが、より高いスキルを証明できる。
(日本経済新聞 10月13日)

料理人の減少をカバーする施策で先行している業態に回転寿司がある。店舗数を増やすには職人を確保しなければならず、この課題を克服する手段として、のり巻きロボットの導入が定着して久しい。米飯加工ロボットメーカー大手、鈴茂器工の2025年3月期のデータを見ると、のり巻きロボットの年間販売台数は19年3月期のおよそ2.5倍に拡大した。
さる8月、鈴茂器工の谷口徹社長を取材した折に、トップシェアを維持している要因を聞いた。谷口氏が挙げたのは、製品力、サービス・サポート力、提案力である。
このうち製品力については、省人・省力化、省費化、省技術化が回転寿司店のメリットとして評価され、寿司ロボットの販売台数を伸ばしているという。
米飯商品を作る人の作業の一部を減らす、もしくはなくすのが省人・省力化。省費化とは、一定量を正確に成型もしくは盛り付けることで無駄な米飯コストを抑制すること。省技術化は、寿司職人を介さず早く美味しく均質に寿司を作ることや、人手で素早くご飯をふっくら美味しく盛付けるという人手による技術を省くこと。
さらに同社はロボットの納入後も、より美味しい米飯商品を効率的に作るための最適なオペレーション、新しい米飯メニュー、効果的なメニュー構成も提案しているという。料理人の確保難でさらに商機が広がってゆくのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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