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三菱UFJ銀、55歳の「給与一斉引き下げ」廃止へ…定年も65歳に延長

三菱UFJ銀行は2027年度から、55歳を機に一斉に給与を引き下げる制度を廃止し、定年を60歳から65歳に延長する。55歳以降でも昇給しやすくすることで、慣例となっている50歳代の外部への出向者は減る見込みで、銀行本体での活躍を促す。若手行員には大幅な賃上げを実施し、年齢を問わず人材を確保する。
三菱UFJ銀ではこれまで、行員の半数程度が50歳代前半に銀行を離れ、関連会社や取引先に役員待遇などで出向してきた。出世競争から離れるため、業界では「片道切符」とも呼ばれる。銀行に残る場合、役員など一部を除き、仕事量を減らして54歳以前よりも低い給料で働く必要があった。
今回、55歳以降に給与を一斉に引き下げる仕組みをなくし、銀行に残って活躍を続ければ昇給が可能になる。50歳代で出向していた人材が、出向先の待遇などと比較し、銀行に残る選択をするケースが増えそうだ。
 若手の待遇改善も進める。26年度にはベースアップとは別に、行員の給与を平均3%超引き上げる。若手を中心に、非管理職では最大7%程度の賃上げになるという。大卒の初任給も30万円に引き上げる。
(読売新聞オンライン 10月8日)

 銀行の65歳定年は珍しくなくなった。三井住友銀行は定年を65歳まで延長し、60歳を迎えた従業員を対象に、プライベートや副業との両立を視野に、週3日勤務を前提とする柔軟な雇用形態を導入している。
 武蔵野銀行は60歳~65歳まで定年後に知識や経験を活かし活躍する再雇用制度「キャリア・マスター行員制度」、65歳~70歳まで知識や経験を活かす場を提供する「シニアパートナー制度」を導入している。阿波銀行は定年を65歳に延長し、再雇用制度により70歳まで勤務できるが、70歳以降の契約更改もできる制度を運用している。
 製造業を中心に黒字リストラが進む時勢にあって、銀行はシニア人材の活用に向かっている。従来は50歳前後で関連会社や取引先への出向が多かったが、定年まで在籍したうえで65歳までの雇用が約束される人事は、本人にとって好ましいだろう。
 一方、出向・転籍の焦点は新たな職場でセカンドキャリアを開花できるかどうか。とくに転籍では後戻りができない。
地方銀行を例にとると、病院の事務長に転籍する例が昔から多いが、活躍しているかどうかは千差万別だ。評判を聞くと「ルーティンワークは無難にこなすが、現場を知らないので、経営改善の能力はない」という意見もあれば、「地頭が良く勉強熱心な人が多いので、さまざまな問題点を発掘して解決してくれる」という意見もあった。
 病院の業績をV字回復させた事務長は「銀行員だったことを忘れることが大事で、これには1年ぐらいかかる。これができれば数字に強いという強みが活きて成果を出せるようになる。元銀行員というプライドを捨てられるかどうかだ」と実感を込める。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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