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「辞めたいのに辞めさせてもらえない」退職代行、新入社員の依頼相次ぐ

新年度が始まって2か月近く。本人に代わって会社に退職の意思を伝える「退職代行サービス」を提供する業者に、新入社員らからの依頼が相次いでいる。中には月の利用数が6年前の約4倍に増えたケースも。背景には若者の転職への意識の変化や、人手不足による企業側の強引な引き留めが指摘されている。
「辞めると言えば、勤め先も良い顔はしないだろう。言いづらくて代行に依頼した」。保育士の女性(22)は、大阪市北区の「フォーゲル総合法律事務所」の退職代行サービスを利用した理由を話す。  
女性は大学を卒業後、4月から関東地方の保育園で勤務していた。しかし、就職前に説明がなかった教材費や制服費など2万円を徴収され、上司には「できて当たり前の仕事。そろそろ覚えてもらわないと困る」と何度も注意された。不信感が募り退職を考えたが、言い出せなかった。
メディアを通じて同事務所を知り、LINE(ライン)で連絡。勤め先や退職理由など約50項目をメールで送った。依頼を受けた事務所は今月初旬、退職届を作成し、勤務先にメールで提出した。
(読売新聞オンライン 5月27日)

厚生労働省長野労働局のホームページに「辞めさせてもらえない」場合の判断基準が説明されている。
たとえば会社に「やめたい」といったら、「急にやめてもらっては困る。就業規則で、退職の申出は1カ月前にいうことになっている」と返答された。すぐに辞めることはできないのだろうか。この質問への回答は、次の通りである。
「民法の規定によれば、原則として14日以上前に退職の意思表示をする必要がある。 就業規則の規定(質問では1ヶ月前)の効力については、労使の特約として認められる場合もある」
 それ以前に、会社が同意してくれないと私は退職できないのだろうか。長野県労働局は
「退職は、労働者の一方的な意思表示により効力が発生しますので、とくに会社の承認は必要としない」と明言している。
 だが、こうした道理が遵守されていれば退職代行サービスは必要がない。
部下に退職の意向を示された上長が慰留するのは、本人のキャリア形成をおもんばかっているからとは限らない。むしろ人手が不足して業務が廻らないとか、退職者を発生させた管理責任を問われるとか、要は自分の保身でゴネている場合が多い。
日頃の上長の振る舞いを見て、退職をめぐって軋轢が起きることが想定できれば、おのずと退職代行サービスに向かうのは自然だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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