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中小が社会貢献を「仕事」認定 ナスタ、労働時間の1割

中小企業やスタートアップで、社員の社会貢献活動を「業務」と捉えて給与を支払う動きが出てきた。宅配ボックスメーカーのナスタ(東京・港)は所定労働時間の最大1割を社会課題の解決につながる活動に費やすことを認める。社員の自主性を養って組織力を底上げするとともに、定着率を高める狙いがある。
ナスタの取り組みは約400人の全社員が対象で、社会貢献活動に所定労働時間の最大1割まで使用することを可能とする。時間の割り当て方は社員に任せる。平日の午前や午後を定期的に使ったり、一度にまとめて取得したりするケースを想定している。
ナスタの年間就業日数は約250日で、社員は最大25日前後を社会貢献に使うことができる。例えば能登半島地震の復興支援など、地方に行く必要がある時は出張費を支給することも検討する。
会社からも高齢者の孤立、子供の貧困といった社会問題へのアプローチを提案するが、時間を割く活動は基本的に社員に申告してもらう。
(日本経済新聞 5月21日)

企業市民という概念がある。企業は収益を追求する以前に、社会の担い手として良き市民であるべきだという考え方だ。社員に当てはめれば、優秀な社員である前に良き市民であるべきだが、現実はそうとは限らない。
市民としては眉をひそめたくなるビジネスエリートは少なくない。だが、いまや社内でも市民としての常識が求められる時代である。それを身につけるには社会貢献活動に参加することがよいだろう。
社員の社会貢献活動を業務に取り扱う取り組みに、退職防止や事業ネタの発掘などを目的に据えるのもよいが、それでは副業と変わらない。
政府がめざす社会像は地域共生社会である。地域共生社会とは厚生労働省のHPによると「社会構造の変化や人々の暮らしの変化を踏まえ、制度・分野ごとの縦割りや『支え手』『受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」である。
要は1950年代にデンマーク社会省の障害者施設担当官だったニルス・エルク・バンクミケルセンが提唱したノーマライゼーションだ。社員をその良き担い手に育てる手段として、社会貢献活動は有効である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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