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「転職エージェントの倒産」が急増 人手不足なのに“4年で4倍”に、なぜ?

2023年は、00年以降で最多の16件の倒産が発生。規模は大きくないですが、コロナ禍前の19年(4件)の4倍と急増しています。
矢野経済研究所の調査によると、人材紹介業の市場は22年に3000億円を超え、年間18%以上の著しい成長を見せています。人手不足に加え、市場規模も拡大しているにもかかわらず、なぜ倒産する人材紹介会社が出てくるのでしょうか。
(中略)
 人材紹介というビジネスの規模はさまざまです。しかし、フリーランスから数千人を超える上場会社まで、そのビジネスモデルはほぼ共通しており、シンプルです。紹介した求職者の入社が決まれば、紹介先企業から紹介手数料を受け取る。この紹介手数料が収益の中心です。  一般的に紹介手数料は、入社が決まった求職者の初年度年収の30%前後といわれています。年収400万円の人が入社したら、紹介会社は紹介先企業から120万円を受け取れます。  
しかし、市場価値の高いスキルや技術を持っている求職者の紹介手数料は割合が高くなる傾向にあります。ITエンジニアやAI技術者といった希少性の高い職種の転職では手数料100%ということもあります。転職時の年収が1000万円だとしたら、そのまま1000万円が人材紹介会社に支払われるということです。したがって、AIや医療などの専門スキルを持っている転職希望者を抱えている会社のほうが収益性は良いです。
(ITmedia ビジネスオンライン 4月23日)

人材紹介会社のイメージは業種によって異なるだろうが、医療・介護・分野では不当に儲けているのではないのかという疑念が強い。
紹介された人材が早期に辞める例や、紹介会社が紹介した人材に転職を持ちかけるなどの実態を踏まえて、厚生労働省はトラブル相談窓口に各都道府県労働局に『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』の設置に加え、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介の認定制度」を設けて、①紹介手数料を職種別に公表している②早期離職時の返戻金制度がある――など一定の基準を満たした人材紹介会社を認定している。
おそらく医療・介護・保育の事業者は、人材紹介会社の倒産件数が増えている現状を知らないのではないだろうか。
背景はコロナ禍による経営環境の悪化である。東京商工リサーチの調査によると、厚生労働省は人材派遣事業者に対して、一定の要件での雇調金の特例措置を講じて積極的な雇用維持を促した結果、派遣会社の倒産は抑制されたが、人材紹介会社には雇調金の支援がなく事業環境の悪化が経営を直撃したという。
23年に倒産した人材紹介会社16件のうち、資本金1000万円以下は8社と半数を占めたが、同社は、小規模事業者は「難航する人材獲得の目途が立たずに、倒産に追い込まれるだろう」と予想する。転職の増加は人材紹介会社の追い風になるが、それは人材を大量にストックできる大手紹介会社にとっての追い風である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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