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高齢者、稼げば支給減額

2024年は5年に1度の公的年金の財政検証の年にあたる。論点の一つは年金制度と働き方にずれが目立ち始めていることだ。働く高齢者が増える一方、65歳以上で働く人の17%が適用されている年金減額が意欲をそぐ。フリーランスなどの老後の備えとしても心もとない。働き方の変化への課題を探った。
建設会社で働く都内の80歳代男性は給料の金額を会社に調整してもらっている。あまり稼ぐと年金を減らされてしまうためだ」。「一部でももらえないというのは悔しい。納得できない部分はある」
公的年金は一定の所得がある人の給付を減らす在職老齢年金制度がある。2023年度は厚生年金を含む収入が月48万円になると、超える分の支給額が半分に減る。全額カットのケースもある。24年度は基準が50万円に上がった。
この制度の対象が次第に増えている。厚生労働省によると21年度末の対象者は65歳以上のケースで49万人で、働く受給権者の17%にあたる。
 1965年に導入された時の狙いは、働く人にも一定額の年金を支給することだった。年金を払うための制度だったが、21年度末には年金を「もらえない額」が4500億円まで膨らんだ。
(日本経済新聞 4月2日)

 厚生年金の減額は「年金を受給している高齢者はこれ以上働いてはならない。それでも働きたいのならタダ働きで貢献して、取り分を若い人に廻すように」というメッセージにも受け取れる。そんな乱暴な意図はあり得ないと即座に反論されそうだが、どんな制度にも制度設計側のメッセージが込められているものだ。
 そもそも公的年金はどんな立ち位置にあるのだろうか。社会保障のあり方を考える枠組みに「自助・共助・公助」がある。「平成20年版 厚生労働白書」は、自助を国民一人ひとりの自己責任と努力、共助を年金や医療保険など社会保険制度、公助を困窮状態に支給する生活保護などと整理しているが、公的年金については「公的」であることから共助ではなく公助に区分すべきだろう。
 ある中小サービス会社の例だが、社員の採用対象年齢は60歳以上で、入社時に公的年金の受給額を聞かれ、減額されない範囲で給料を決めているという。会社にとっては給料を低く抑えられる。年金が減額されないための配慮と見えないこともないが、人件費を抑えるために年金受給者を雇用しているのが目的だろう。同様のケースは少なくない。
 厚生年金を減額するのなら、総収入の基準を50万円でなく、もっと高額に設定しないと高齢者の労働力を引き出せないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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