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中小企業の賃上げ、58.5%が「実施予定」。原資は「販売価格の値上げ」

採用業務クラウド「採用係長」を提供するネットオン(大阪市北区)は、「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の人事・採用担当者を対象に、賃上げに関するアンケート調査(回答557人)を実施した。
調査の結果、58.5%の事業所が賃上げの実施を予定し、前回調査(2023年3月)から3.9%上昇した。賃上げの種類は半数以上が「ベースアップ」と回答。約6割が1〜5%未満の範囲で賃上げを予定している。
原資確保のための取り組みは「販売価格の値上げ」が最多。75.2%の事業所が何らかの取り組みを行っていることが明らかになった。賃上げ理由1位は「従業員の生活を支えるため」。実施しない理由1位は「現在の賃金が適切であるため」となった。
(ネットオン作成ニュースリリースを要約 3月19日)

この調査では、中小企業が業績に関わらず賃上げを実施するという厳しい実態が浮き彫りになった。「業績が伸びた(回復した)ため」を賃上げ理由とした事業所は、わずか16.9%にとどまった。
この実態は賃上げを実施しない理由にも反映されている。理由の2位は「業績の向上(回復)が見込まれていないため」、3位は「物価高や円安によるコスト増加のため」、4位は「社会保険料の増加により会社の負担が増えるため」だった。
調査の回答者は賃上げの課題に「売値が上がらず、経営負担が大きい」(工場・製造/~4名/兵庫県)、「販売価格に転嫁するのは難しい、(建築・不動産/10~19名/埼玉県)、
「賃上げをしても従業員が気づいていなければ効果はない。従業員に見える形での賃上げが必要」(商社・卸売/20~29名/三重県)などを述べている。
 価格転嫁の促進には公正取引委員会も動き出す。3月15日に次の声明を発表した。
「受注者からの価格転嫁の要請の有無にかかわらず、価格転嫁の必要性について価格交渉の場において明示的に協議する必要があることについて、更なる周知を行っていくなど、引き続き、取引の公正化をより一層推進する観点から、適正な価格転嫁が可能となる取引環境を整備するための取組を進めていく」
 価格転嫁問題は、取引縮小を怖れて打診を控える中小企業も多いだろうから、その解消も必要だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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