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中小、大手との賃金差額が3倍に 春闘、13日が集中回答日

大手企業の平均月例賃金から中小企業の賃金を差し引いた額が2000年からの23年間で最大3倍に拡大したことが12日、労働組合の集計で分かった。今春闘は13日が大手企業の集中回答日で、物価高と人材不足を背景に過去最高水準の賃上げの回答が相次ぐとみられる。デフレ経済では大企業が下請けに高い負担を強いてきた。格差拡大を防ぐにはこうした商習慣からの脱却が急務だ。  
集計は中小製造業が中心の産業別労働組合(産別)「JAM」が昨年秋までに実施。組合員数300人未満と、千人以上の企業の月額所定内賃金(平均値)を比べた。高卒後すぐに就職した30歳の場合、2000年では千人以上が23万8642円、300人未満は22万9335円で、差は9307円だった。この差が23年には2万9184円と3.1倍に広がった。  
25歳や35歳でも同様の傾向。50歳では30歳ほどの差はないが、300人未満は賃金自体が23年前から1万8千円ほど減った。JAMの担当者は「賃金カーブが右肩上がりにならず伸びなかった」と分析した。
(共同通信 3月12日)

 中小企業と大手企業は退職金の差も著しい。新卒入社で定年まで同じ企業で働いた場合、
中小企業の平均退職金は、高卒者が1204万5000円、大卒者が1323万円(中小企業の賃金・退職金事情/東京都産業労働局・令和4年版)。
 大手企業は、高卒者が2010万3000円、大卒者が2684万円。中小企業との差は、高卒者が約900万円、大卒者が約1350万円である。生涯収入では1億円程度の差がある。ここまで差が開いていると、学生の大手企業志向を「安定志向でチャレンジ精神が足りない」と批判することは現実的とはいえない。大手企業への就職を望むことは経済原則にかなっている。
今春闘での大手企業の賃上げ率を見ると、この差はますます開いていくのではないだろうか。
 新浪剛史経済同友会代表幹事(サントリーホールディングス社長)は3月12日の会見で、今春闘について「大企業・中小企業に限らず、組合活動のようなものが少し活発になってきたため、その雰囲気を読み取り、想定より早く回答した企業が(多く)あったのではないか」と述べた。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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