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中小賃上げ 価格転嫁促す

岸田文雄首相は13日、2024年春季労使交渉(春闘)で3度目の政労使会議を開いた。中小企業が賃上げ原資を価格転嫁できるように取引適正化に取り組み「官製春闘」の色合いを強める。賃上げの結果は9月の自民党総裁選での再選戦略にも直結する。
(中略)
14年春闘で安倍晋三首相が賃上げを要請した「官製春闘」と呼ばれた。政府が介入する流れが続き、具体的に「3%」と平均上げ幅の水準まで言及した年もあった。
岸田政権も発足当初から「3%超」といった目標を要求し、賃上げ税制を拡充してきた。今回はさらに中小企業が賃上げの原資を確保するための取引環境も整備し、関与度合いを強めている。
実際に日産自動車に下請法違反で再発防止を勧告するなど取り締まりを強化している。労務費転嫁に関する特別調査にも入り、価格転嫁への取り組みが不十分な企業は独占禁止法に従って事業者名を3月中に公表する。
賃上げの原資になる公定価格も引き上げた。24年度診療報酬改定で医療機関の初診料を30円増額する。公共事業での労務費の指標となる労務単価や運送業の標準運賃なども相次ぎ増やす。
(日本経済新聞 4月12日)

2024年度診療報酬改定率は本体が0・88%と前回の0・46%を上回るプラス改定だったが、医療関係者の受け止め方はどうも芳しくない。一時は財務省の意向でマイナス改定案が浮上したものの、日本医師会など関係団体のロビー活動でプラス改定を実現させ、安堵したのちに不満が湧き出している。
本体のプラス0.88%のうち、医療従事者の賃上げ対応として、40歳未満の勤務医と事務職等に0.28%程度、看護職・病院薬剤師・その他の医療関係職種に0.61%、入院時の食事基準額として0.06%、その一方で「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」にマイナス0.25%が設定された。
40歳以上の医師が賃上げの対象になっていないうえに、プラス改定分のほとんどを賃上げにしか充当できない。
東京保険医協会審査指導対策部長の浜野博氏は、協会ホームページに「2024年診療報酬改定率に抗議する談話」と題する見解を掲載している。
「『本体』プラス改定となったことのみを強調するメディアも多いが、医療従事者の賃上げ対応分と入院時の食事基準の対応分を除くと、用途が限定されない本体財源は僅かプラス0.18%にすぎない。物価高騰や未だ続く感染症対策に対応するためには全く不十分である」
診療報酬のプラス改定分は国民負担の増加につながるので、上げ幅の設定が難しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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