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中小企業、高まる「賃上げ余力」 労働分配率70%に低下

中小企業の「賃上げ余力」が高まっている。企業の利益などが賃金に回る割合を示す労働分配率は足元で70%前後と1992年以来の低水準が続く。経常利益など企業の稼ぐ力が伸びて分配率を下押しした。賃上げ機運の中小への波及が期待できる一方で、経営体力が弱い零細企業の生産性を向上できるかが残る課題になる。
財務省が4日に発表した2023年10〜12月期の法人企業統計をもとに試算すると、中小企業の労働分配率は経常利益や人件費、減価償却費、支払利息などの合計を分母におき、人件費を分子にして計算する。企業が生んだ付加価値のうち、給料などで従業員にどれだけ分配したかを示す。
財務省が4日に発表した2023年10~12月期の法人企業統計をもとに試算すると、中小企業の労働分配率は直近4四半期の移動平均で70・7%と、前年同期から1・4ポイント低下した。財務省は資本金1000万円以上~1億円未満の企業を中小企業と定義する。
(中略)
 23年の賃上げ率は連合の集計で3・58倍と30年ぶりの高水準だったものの、組合員300人未満の企業は3・23%にとどまった。物価の伸びに追いつかず、実質賃金の前年同月比は21カ月連続でマイナス圏に沈む。
(日本経済新聞 3月5日)

 公正取引委員会は3月7日、日産自動車に対して下請法違反(下請代金の減額の禁止)を理由に、法令順守と再発防止を求める勧告を行った。日産自動車が自動車部品を製造する下請企業30社以上に対して、過去数年間にわたって納入代金を計約30億円、一方的に引き下げていた。
 賃上げ対策として、下請企業が受注額への価格転嫁をどう実現させるかが焦点に浮上しているのに、日産自動車は逆行する動きに走っていた。しかも、それだけではない。
日本自動車工業会は取引対価・価格交渉の指針として「各社において絶対に実施しない事項」として①原材料費、エネルギー費のコスト上昇が明らかにもかかわらず十分な協議を行わないこと②労務費等について、取引先の声・困り事を聞かず、十分な協議を行わないこと――などを明記している。
業界団体が示した指針は日産自動車にとってタテマエでしかなかったのだが、これは自動車製造業界の根深い体質でもる。公取は「自動車製造業においては、近年、本件と類似の違反行為が生じ、公正取引委員会が下請法に基づく勧告を行っている」と指摘したうえで、「自動車製造業における下請法違反行為に対し、厳正に対処していくとともに、改めて業界団体への周知等を通じた啓発活動を行っていく」と表明した。
優越的地位の乱用は企業の性のようなものだ。他業界でも同様に公取に摘発されない限り、優越的地位を乱用する企業は後を絶たない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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