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大学生の就活解禁、初任給引き上げで人材確保へ

横浜市のパシフィコ横浜で、1日午前に始まった就職情報会社マイナビが主催する合同企業説明会には、約140社が出展した。このうち、6割が初参加だ。企業名が記された各社のブースには、「初任給25万円」「転居なし」「完全週休2日制」といったチラシが目立つ。
 マイナビが2月前半に実施した調査によると、25年卒について、企業の77%が採用活動は厳しくなるとの見通しを示している。出展した富士屋ホテル総務人事部の福田篤史次長は「人材獲得競争は年々、厳しさを増している。採用は最重要課題だ」と話す。
 人材を確保するため、初任給を引き上げる動きが相次いでいる。みずほフィナンシャルグループは、傘下のみずほ銀行で24年春入社の初任給を5万5000円引き上げ、26万円にした。担当者は「初任給は就職先を決める重要な要素の一つだ」と言い切る。
 ゼネコンの鹿島建設は、3年連続で初任給を引き上げており、24年度は最大の引き上げ幅になるという。民間調査機関の労務行政研究所の調べによると、23年度に初任給を引き上げた東証プライム上場企業は7割に上り、24年度も高い水準が見込まれるという。
(読売新聞オンライン 3月2日)

 いわゆる組織風土の緩い会社では成長できないと危機感を覚え、早々に退職する若手社員が多いという。緩いかどうかは体感にも由来するので本人にしか評価できないが、採用時に会社側はどんな説明をしているのか。
「夢」「志」「成長」「家族的雰囲気」などをキーワードに訴求する会社にブラックが多いことは、とうに学生に見透かされている。そこでワークライフバランスが成り立つ根拠を訴求するアピール方法に切り替えたのだろうが、額面通りに受け取ると、実態とのかい離に憂き目を見かねない。
この記事にある「初任給25万円」「転居なし」を例にとると、初任給が25万円でも昇給ペースがどうなのかがわからないうえに、転居をともなう転勤がなくても長距離通勤を強いられる転勤があるかもしれない。給料で肝心なのは30歳、40歳、50歳それぞれの時点の平均年収である。
たとえ初任給が高くとも昇給ペースが遅く、教育費や住宅費で生活コストがかさむ30歳から50歳にかけて苦境に陥るのは避けたい。いまは転職の多い時代だから先のことまで気をもむ必要がないのではないか。そんな意見もあるだろうが、社員の生活設計を考慮した給与水準を設定しているかどうかに、会社の体質が反映されているものだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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