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中小企業の「賃上げを実施予定」割合は61.3%

日本商工会議所・東京商工会議所の調査(回答企業2988社)によると、2024年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は61.3%と6割を超え、 昨年度(58.2%)から3.1ポイント増加。賃上げに取り組む企業は着実に増加した。そのうち「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」は60.3%。 昨年度(62.2%)から1.9ポイント減少も、依然6割が「防衛的賃上げ」である。
 「賃上げを実施予定」のうち「防衛的な賃上げ」と回答した企業の割合は、宿泊・飲食業を除く全ての業種 で半数を超える。介護・看護業では88.5%と9割近くに達し、他の業種と比べ際立って高い。
規模別に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、従業員数5人以下の企業で3割強(32.7%)、 6~10人の企業で約5割(50.3%)にとどまり、規模が小さい企業ほど低い。 ○従業員数5人以下の企業では「賃上げを見送る予定(引下げ予定を含む)」が16.8%と2割近い。
業種別に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、介護・看護業(66.7%)が最も多く、 製造業(64.2%)、建設業(63.4%)が続く。 ○小売業(48.7%)、宿泊・飲食業(54.1%)など、対消費者・BtoCの業種では 「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合が、他業種に比べ低い。
(日本商工会議所・東京商工会議所調査報告を要約 2月14日)

診療報酬も介護報酬も賃上げ財源を手当てすることを主眼に、前回の改定率を上回るプラス改定となった。プラス改定分はそのまま国民負担の増加になる以上、プラス改定の趣旨通りに介護・看護業の賃上げが実施されるのは当然だ。しかし「賃上げを実施予定」割合が全業種で最も多いとはいえ、70%に満たない。
本来なら100%であるべきだが、70%に満たないのは、プラス改定分を資金繰りに廻そうと考えている企業があるからなのだろうか。
介護職の賃金をめぐっては、こんな見解もある。過日に取材した従業員1000人規模の介護事業サービス会社の人事部長は「介護職は給料が安いから他業界への転職が進んでいるように報道されているが、離職理由で一番多いのは給料ではなく職場の人間関係だ。人間関係が良好なら辞めない」と話した。
介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(回答者・1万9890人)を確認しても、最も多い離職理由は「職場の人間関係に問題があったため」の27.5%だった。
次いで「法人や施設・ 事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」が22.8%、「他に良い仕事・職場があったため」 が 19.0%で、「収入が少なかったため」(18.6%)は4番目の理由だった。最も多い離職理由は男女で異なり、男性は「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」(30.3%)、 女性は「職場の人間関係に問題があったため」(26.9%)だった。
賃金水準は離職理由の上位だが、トップではない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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