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2023年の実質賃金は2.5%減、過去2番目の下げ幅 物価高で

厚生労働省が6日発表した2023年分の毎月勤労統計調査(速報)で、物価を考慮した働き手1人あたりの「実質賃金」は前年比2・5%減だった。名目賃金が物価の大幅な伸びに追いつかず、減少は2年連続。減少幅は比較可能な1990年以降では、消費増税のあった14年(2・8%減)に次ぐ大きさだった。
 昨年の春闘で正社員の賃上げ率は平均3・58%(連合集計)で30年ぶりの高水準だった。春闘もあり、名目賃金にあたる現金給与総額は、1・2%増(月額32万9859円)と3年連続で増加。しかし、実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3・8%増と、上昇率が大きかった。  
現金給与総額のうち、基本給などの「所定内給与」は1・2%増の25万1309円。一方、賞与を含む「特別に支払われた給与」は2・0%増の5万9570円で、コロナ禍からの反動で伸びた前年(4・6%増)と比べて伸びは鈍化した。  
現金給与総額を就業形態別にみると、フルタイムの一般労働者が1・8%増の43万6849円、パートタイム労働者が2・4%増の10万4570円で、いずれも過去最高額だった。  
実質賃金は20年の水準を100とした指数でみると、23年は97・1で、1996年(116・5)から下落傾向が続いている。
(朝日新聞デジタル 2月6日)

実質賃金の減少は家計を圧迫している。総務省が実施した2023年の家計調査によると、
総世帯の消費支出は、 1世帯当たり 24万7322円。前年比 で実質2.4%の減少だった。
2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり 29万3997円で、実質2.6%の減少だった。
 一方、 勤労者世帯の実収入(総世帯)は、1世帯当たり 52万2334円で、前年比実質6.0%の減少。2人以上の世帯は1世帯当たり 60万8182円で、実質 5.1%の減少だった。
日本銀行は今年1月に発表した「経済・物価情勢の展望」で、 消費者物価(除く生鮮食品)について「前年比は、来年度にかけて、 既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰するもとで、政府による経済対策の反動がみられることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる」と予想する。25年度 は前年比のプラス幅は縮小すると見通している。
物価高のペースが沈静化に向かうとはいえ、前年比で上昇しつづければ、賃上げ率が前年比を上回らないと実質賃金の前年比減がつづく。このイタチゴッコはいつ終わるのか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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