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計画通り採用ができなかった中小企業7割超  2024年4月入社

日本商工会議所の調査によると、新卒採用(2024年4月入社)を「実施した」企業は35.8%と、前年 同月調査と比べ、0.9ポイント減少した。新卒採用を実施した企業のうち、計画通り採用できなかった企業 (「採用できたが計画した人数には満たなかった」「募集した が採用できなかった」の合計)は74.0%と、前年同月調査から6.4 ポイント増加した。人手不足により、中小企業の人材確保が厳しさを増す状況がうかがえる。
業種別に見ると、建設業では全産業比4.8ポイント増の78.8%と高い水準になっている。
採用活動にあたって取り組んだ事項として、会社説明会の開催 や合同説明会への出展」が55.8%、「インターンシップや職場体 験会、社員との交流会の開催」が52.6%と高い水準となった。
また、「初任給の引き上げ」を実施した企業は50.2%と半数を超えた。正社員の賃金でも、「人材確保・定着やモチベーション向 上」のために多くの企業が賃上げを実施しており(2023年12月調査)、新卒採用においても同様の傾向が見て取れる。
(日本商工会議所発表 1月31日)

 大手企業の賃上げラッシュに中小企業はついていけない。賃金格差はいちだんと開いていくのではないだろうか。当然、採用拡大も開いていく。
 日本商工会議所の調査に中小企業がコメントを述べているが、「新卒採用を実施しているが、学生からの問合せはほとんどない。 今後も状況が変わる見込みはない」(加古川一般工事業)「卒採用を実施したが手ごたえが全くない。不足を補うために外国人材を活用している」(藤沢総合スーパー)とお手上げ状態のようだ。
 ただ、「初任給の引き上げにより、計画数以上の採用を行うことができた」(高松宿泊業)という事例もある。
 岸田文雄首相は1月30日に行った施政方針演説で「赤字の中小企業や医療法人でも使えるように賃上げ税制を拡大強化した。中小企業の労務費上昇のスムーズな価格転嫁を後押しする公正取引委員会などの強力な指針も作った。順守に向けて全国で周知徹底を進めている」と述べた。
 しかし中小企業の賃上げを促すには、賃上げ税制よりも価格転嫁による人件費確保策のほうが現実的だ。支払側の大手企業への、政府の強い働きかけが必須である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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