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春闘スタート、脱デフレへ労使が異例の「共闘」中小への波及も焦点

経済界と労働組合の代表が賃上げについての考えなどを説明しあう経団連主催の「労使フォーラム」が24日、東京都内で始まった。デフレからの脱却に向け、約30年ぶりの高水準だった昨年を上回る賃上げを労使がともに目標として掲げる異例の春闘が幕を開けた。
労組の中央組織・連合の集計で昨年の正社員の賃上げ率は平均3・58%。今年の春闘で連合は「5%以上」の賃上げを目標として掲げており、賃上げが中小企業にも広がるか、どこまで上積みできるかが焦点だ。  
経団連の十倉雅和会長は、中国訪問のため労使フォーラムを欠席。ビデオメッセージで、「物価上昇に負けない賃上げをめざすことが経団連・企業の社会的な責務だ」と強調した。さらに、資源やエネルギー高に対応した昨年の春闘を起点に、賃金と物価が緩やかに上昇する社会をつくるべく、大企業に「できる限りの賃上げ」を呼びかけた。  
労組側は、連合の芳野友子会長が春闘の方針について説明するほか、繊維や流通などの労組でつくる産業別組織(産別)の「UAゼンセン」、中小製造業の労組でつくる産別「JAM」などの幹部が講演する。産別では過去最高の要求額とする方針が相次いでいる。
(朝日新聞デジタル 1月24日)

 今春の賃上げ要求のニュースが続いている。たとえばUAゼンセンは賃上げ率6%、NTT労組はベースアップ5%、キリンホールディングスと伊藤忠商事は賃上げ率6%程度、アフラック生命保険は賃上げ率平均5・5%、本田技研労働組合は賃上げ率5%超――というように勢いがついている。
 今年の特徴は「昨年以上の賃上げ」だが、このペースについていけないのは中小企業だけではない。公務員の賃上げも中小企業並みにしか進まない。
 気がかりなのは公務員の志願者が減っていることだ。国家公務員試験の受験者数が減少傾向を辿っていることは人事院も憂慮しているが、地方公務員の志願者も減っている。さる1月15日付け毎日新聞が報じているが、同紙が実施したアンケート調査で、23年度の47都道府県の採用試験で土木や獣医など技術・専門職の採用予定数割れが起きたという。
地方公務員の給与水準が低いわけではない。総務省の「令和4年度地方公務員給与の実態」によると、 地方公務員(一般行政職)の平均年収は約620万円。民間企業の平均年収458万円(令和4年度・国税庁調査)に比べて約160万円高い。
だが、公務員に聞いてみると、国家公務員も地方公務員と給与水準に比較対象は大手企業である。だから「給与が低い」という見方になる。この見方が妥当かどうかはともかく、公務員が不足すると行政機構が弱体化し、社員インフラ全体がぐらついてしまう。公務員の魅力をもっと発信してほしい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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