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移民規制強めるメローニ伊政権、外国人労働者45万人受け入れへ

イタリアのメローニ政権が、外国人労働者の受け入れを拡大している。2023年から25年までの3年間の受け入れ計画は45万人に上り、22年までの3年間の2倍以上だ。メローニ氏は就任以来、移民規制を厳格化してきたが、日本と同水準の高齢化で人手不足が深刻化するなか、外国人労働者なしには社会が立ちゆかない現実がある。
(中略)
 右翼政党「イタリアの同胞(FDI)」を率いるメローニ氏は22年9月、海上封鎖などによる移民の流入阻止を主要公約の一つとして総選挙に勝利。首相就任後は、移民の規制策を相次ぎ実施してきた。昨年7月には、北アフリカ諸国と不法移民の摘発強化で合意。11月には強制送還を進めるため、海上で救助した移民・難民の一時収容施設をアルバニアに建設する計画を発表した。
 一方で、合法移民としての外国人労働者の大幅な受け入れ拡大にかじを切った。政府は昨秋の政令で23~25年の3年間に、欧州連合(EU)圏外の外国人に対する就労ビザの発行数を、22年までの3年間の2・4倍に当たる45万2千人分に増やすと決めた。10月にはタヤーニ外相がチュニジアを訪れ、年間4千人のチュニジア人を労働者として受け入れる協定を結んだ。
(朝日新聞デジタル 1月13日)

 在留外国人は2022年末に307万5213人で、日本の総人口の2.5%を占め、日本に住む40人に1人が外国人になった。23年末の在留外国人は322万3858人に増加した。
 日本は移民政策を取っていないが、総務省が多文化共生社会を提唱するなど実質的に移民社会に移行する兆しが垣間見える。経団連は永住権取得要件の見直しを提言している。
 外国人が永住権を取得するには、原則として引き続き10年以上日本に在留し、この期間のうち就労資格または居住資格をもって引き5年以上の在留が要件だ。この要件に対して経団連は「人材獲得競争の相手となる韓国・台湾等では5年の在留で永住権を取得可能であり、競争環境のイコールフッティングの観点から、在留期間の要件を諸外国の状況も踏まえて見直すべきである」と主張する。
 この主張のベースは「受入」から「戦略的誘致」へ転換の提言だ。国際的な人材獲得競争の激化と人口動態・産業構造の変化を踏まえ、日本に来る外国人を単に「受け入れる」国から、必要とする外国人材を戦略的かつ積極的に「誘致する」国へと入管政策における発想の転換を求めている。
 ただ、足元の情勢は戦略的誘致に逆風が吹いている。技能実習生の最多の送出国であるベトナムで日本人気がすっかり冷え込んでしまったという。ホテル・旅館に技能実習生を紹介してきた監理団体スタッフは語る。
「ベトナムは経済が発展して、若者が日本に稼ぎに行く理由はなくなった。技能実習生として日本のホテルや旅館で就労して、日本式おもてなしを学んでから、やがて現地で次々に建設されるホテルに就職するという青写真も消えてしまった。見通しよりも早くホテル建設が進んでいるため、現地に就職先はいくらでもある」
 見方を変えれば、逆風が吹いているだけに、戦略的誘致が求められているともいえる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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