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「一律5万円増」「時給アップ」物価高で賃上げ実現した中小企業

物価や光熱費などの高騰が続き、賃金の値上げを求める国民の声は日増しに高まっている。日本企業の99%以上を占める中小企業の実施が大きなカギとなるが、賃金引き上げのコストアップに対応できない企業が多いのが実態だ。そんな中、あえて賃上げに踏み切る中小企業も出てきている。その重い決断と事情を取材した。 ウェブサイトや映像の制作などを行う「MONSTER DIVE」(東京都港区)は、34人の全社員の基本給について4月から一律1万5000円ベースアップすることを決めた。 岡島将人代表取締役によると、これまで定期昇給を含めた給与改定を行ってきたが、急激な物価高騰を受け、賃上げを決断した。通常、企業にとって固定費である人件費の負担増は経営に重くのしかかる。 岡島氏は「ベースアップに関わる費用は年間約1000万円前後となり、中小企業にとってかなり大きなインパクトを与えるが、スタッフは『人財』であり、生活の安定化は最重要経営課題と考えている」と説明。今回のベースアップによる価格転嫁は行わず、コストの効率化などで適正な利益率を確保するとしている。たとえば、制作工程を精査しネットワークインフラ費用などのコストを見直すことで賃上げの原資を生み出す方針だ。 (産経新聞 1月27日)

政府は中小企業が活用できる賃上げ支援の公的制度を大々的にピーアールしたほうがよい。中小企業のなかで、公的支援制度をこまめにチェックして有効に活用しているのは少数派だ。多くの中小企業は積極的に調べる余裕がなく、銀行や税理士から教えられるケースが多い。 代表的な賃上げ支援措置には下記がある。 「中小企業向け 賃上げ促進税制」は、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度。雇用者全体の給与等支給額を前年度比で1.5%以上増加させた場合は15%税額控除でき 2.5%以上増加させた場合は30%税額控除できる。 さらに教育訓練費を前年度比で10%以上増加させた場合は、 追加で10%税額控除できる。 「事業再構築補助金」は新分野展開や業態転換などに係る設備投資などを補助し、事業終了後3~5年の間 に一定水準以上の賃上等で、上限3000万円を上乗せする。 「業務改善助成金」は生産性向上に資する設備投資などを実施し、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げる場合に、その設備投資などに要した費用の一部を支援する。 銀行、税理士、商工会議所、法人会、業界団体などが補助制度の情報を中小企業に伝えて、申請手続きをサポートすれば賃上げの希望がもてる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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