Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

診療報酬改定巡り財務・厚労両大臣が協議開始 先行きは不透明

鈴木財務相は13日、武見厚労相と財務省で会談し、2024年6月に改定される診療報酬について初めて協議した。
協議を終えて武見厚労相は、「医療分野の賃上げを実現するためにはどうしたらいいかというのは、財務省と厚労省共通の大きな課題だ」と述べた。
そのうえで、「高齢化がこれから進展していく中で、医療はますます必要とされる」と指摘し、「医療従事者が安心して着実に仕事を継続してできるように賃上げは必要だ」と強調した。
厚生労働省は、医療従事者の賃上げのため診療報酬の引き上げを求めている。 一方、財務省の審議会は、高齢化などによる国民負担の上昇に歯止めが必要だとしたうえで、小規模な病院については経常利益率が全産業の平均を大きく上回っていることを理由に、診療報酬のマイナス改定が適当とする建議をまとめている。
政府は、診療報酬の改定を年内に決定することにしているが、協議の行方は不透明だ。
(FNNプライムオンライン 12月13日)

2年おきに改定される診療報酬の改定率をめぐって、財務省の財政制度等審議会がマイナス改定を主張し、日本医師会を中心に医療関連団体がプラス改定を主張するのは、いわば診療報酬改定の風物詩である。かつては厚生労働省の中央社会保健医療協議会(中医協)が改定率を決めていたが、いまでは財務相と厚労相の大臣折衝による政治決着が常套手段になった。
12月8日に開かれた中医協総会では、支払側(健康保険組合連合会、全国健康保険協会など)と診療側(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会など)が改定率について、それぞれ意見を表明した。
支払側は「医療経済実態調査によれば、損益差額の観点からは、一般病院は新型コロナウイルス関連の補助金を含めれば1.4%の黒字、一般診療所も黒字が拡大している」「資産・負債の観点からも、長期借入金をはじめとする固定負債が減少して資本が増加しており、一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調といえる」と指摘した。
そのうえで「患者の負担増や保険料の上昇に直結する安易な診療報酬の引き上げを行う環境にはない」と主張した。
 一方、診療側は①人材確保の原資の確実な担保②約30年間据え置かれている入院中の食事療養費についての対応③ICT活用や医療の高度化への対応――などを理由に「従来以上の大幅なプラス改定が求められている」と主張した。
 政権は裏金疑惑で大混乱していが、予算折衝は官僚同士で粛々と進むのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。