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人材を資産と見なし、投資をする

人材を資産と見なし、投資をしてリターンを生み出す――。人的資本の理論は1960年代に発達し、ノーベル経済学者のゲーリー・ベッカー氏ら多くの研究は投資が労働生産性にもプラスに働くと示してきた。だが、日本は投資に及び腰だった。経済産業研究所によると日本の投資額は10年代にGDP比0.34%と欧米の3分の1。その間に生産性は米国との差が8ポイント開き、6割の水準になった。
 人への投資の効率は設備投資を上回る場合も多い。丸井グループは人への投資で期待される収益率は12.7%で、店舗などの有形資産(10%)を上回る。同社は16年度から5年で投じた320億円の人への投資が家賃保証やアニメ事業などの新ビジネスを生み、10年で560億円のリターンにつながるとみている。
 一橋大学の小野浩教授は「装置を導入しても使いこなす人材がいなければ意味がない。人への投資が設備投資を補完する」と話す。
 ただ、投資を増やすだけで人的資本が力を発揮するわけではない。事務機器部門の社員からデータサイエンティストなどを育て、1人当たり営業利益を22年度から3年で7割高める目標のリコー。瀬戸まゆ子CHRO(最高人事責任者)は「個人が能力を発揮できる体制が欠かせない」と話す。
(日本経済新聞 12月6日)

 
東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードで、人的資本について「人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」と記載されている。
 人的資本を重視すべき理由は、「企業な人なり」を提唱したと伝えられる松下幸之助がわかりやすく説明している。著書『人事万華鏡』から引用する。
「事業は人を中心として発展していくものであり、その成否は適切な人を得るかどうかにかかっているといってもいいだろう。どんなにそれが伝統のある会社であり、またいい内容を持つ事業であっても、その伝統をになうべき適切な人を求めることができないというのでは、だんだんと衰微していってしまうだろう。
だからどこの会社でもいわゆる人づくりということを非常に大事なことと考え、人を求め、人を育て、人を生かすことにつとめるということになってくる。そしてそういうことに成功するところほど、業績を伸ばし、隆々と発展していると思う」
松下幸之助を信奉していなくとも、この考えを実践している企業は多い。社員が育たなければ企業は存続発展できないことは自明の理である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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