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若手、新興への転職18倍 成長もタイパ

会社と社員の力関係が変わってきた。人手不足や転職の増加で主導権が従業員に移り、若手や中堅は職場環境が良くても成長機会の乏しい組織に背を向ける。資本市場も人材を育てられる企業に投資を絞り始めた。社員の「自立」が企業に新たな生き残りの条件を突きつける。
(中略)
 企業と従業員の関係が変化している。社員は生活の安定と引き換えに、異動や処遇で会社の「支配」を受け入れてきた。だが、若手や中堅が会社に求めるのは安定よりも自分の成長に変わった。転職をスキルの習得できない職場からの「脱出」と位置付け、成長にもタイムパフォーマンス(時間効率)を追求する。
 タイパの象徴が大企業から新興企業への転職だ。エン・ジャパンの34歳以上を対象とした転職支援サービスでは4~9月に大手から新興に転じた人が5年前の18倍になった。年齢に関係なく大きな仕事を任され、速く成長できるとして若手が引き寄せられている。
(日本経済新聞 12月5日)

 大手企業と違って20代でも権限を付与される中小ベンチャー企業に就職したほうが成長のスピードが速くなる――この考え方は、昭和の時代から連綿とつづいている。採用広告でも中小ベンチャー企業はこぞって「若いときから権限をもてる」「大企業に就職するよりも実力が身につく」とアピールしていた。
 だが20代のうちに管理職に就ける会社の多くはどこか怪しげで、社員の出入りが激しく、早く実力が身につくとは言い難いのが実情だった。求職者もその実情を見透かしていた。
しかも当時は、就職先選びの基準がいま以上に「寄らば大樹の陰」の時代で、中小ベンチャー企業には有能な人材が集まりにくかった。
 ひるがえって今日、ピカピカのエリート学生がベンチャー企業に就職し、大手企業に就職しても2~3年でベンチャー企業に転職する。大企業の場合、役員に昇格できるのはおおむね20年以上先だが、20年後にいまの勤務先が存続しているとは限らない。願望の前倒しはどんどん進んでゆく。
 ただ、大手企業に就職するとビジネスの作法が身につくうえに、有能な上司や先輩の仕事の仕方を学べるので利点もある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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