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訪問介護、若手確保急ぐ 働き手の4割、60歳以上

介護大手のニチイホールディングスが日本生命保険の傘下に入ることが決まった。介護業界は在宅介護を担う訪問介護員で60歳以上を占める割合が4割に迫り、深刻な人手不足が続く。ツクイが若手だけで運営する事業所を立ち上げて年収も引き上げるなど、各社は若手が就職しやすい環境整備を急いでいる。
ツクイは7月、子会社を通じて20~40代の従業員だけで構成する事業所を神奈川県内に2カ所開設した。営業も兼務してもらい、固定給のほか成果報酬を出す。従業員の年収は既存の事業所より3割高くなる見通しだ。
若手はIT(情報技術)に抵抗感が少なく、介護記録システムの導入などで業務負担を軽減できるという。土日祝日は休日とし、「稼げる訪問介護の職場を作る」(高畠毅社長)。約130ある既存の事業所は今後増やさずに、新スタイルの事業所を27年までに50カ所拡大する方針だ。
 セントケア・ホールディングも22年に設立した子会社セントケアDX(東京・中央)で、週休3日制を取り入れた。大きなデスクやコピー機などが不要で事業所の規模縮小で抑えた費用を従業員の処遇改善に充てて若手層の雇用を増やす。
(日本経済新聞 12月3日)

 都市部で訪問介護人材を募集しても1年間で1人も採用できなかったとか、1年後に元に戻す約束で施設勤務から訪問介護事業所に異動させて以降、2年目以降も異動がないことから本人が退職してしまったなど、介護業界のなかでも訪問介護の人材不足がとくに深刻だという。
例えば社会福祉協議会の訪問介護事業所は、この5年で200カ所以上が閉鎖した。社協の事業所は民間事業所が訪問できない遠方をカバーしているので、山間部などで介護を受けられない高齢者が増えている現状も推察できる。
訪問介護人材の不足をめぐっては、登録ヘルパー制度に問題があるのではないかという見方がある。常勤雇用をメインとせず、登録制度でまかなってきたことが人材確保を不安定にした要因ではないのかと。
 しかし常勤ではなく、働きたい時間帯に働きたいという雇用形態が台頭しているうえに、「夫の扶養家族に入る年収の範囲で働きたい」という人も少なくないという。介護人材に限ったことではないが、業界の事情よりも就労観の変化に合わせないと人材確保は難しくなった。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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