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介護職、賃上げでも増えぬ給与 経営見える化待ったなし

介護業界はいま慢性的な人手不足にあり、年末の介護報酬改定のテーマも介護職員の待遇改善だ。政府は支援を重ねてきたが、現場の働き手まで届きにくい構造に阻まれている。
「給料が大きく上がった実感はない」。介護福祉士として25年目を迎えた石川県の中村寿史さんはこう打ち明ける。
 政府は17年に「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円相当の処遇改善をする」との方針を示した。中村さんは「上がったのはせいぜい1万円程度」と明かす。
(中略)
 財務省は介護事業を運営する社会福祉法人の現預金や積立金が近年増加したと指摘する。17年度に2億9500万円だった1法人当たりの積立金が、21年度は3億2700万円に増えた。支援を拡充しても積立金に廻っては意味がない。
 そこで厚労省は24年度にも省令を改正し、各事業所の職員1人当たりの賃金データの公表に乗り出す。
(日本経済新聞 11月22日)

 介護関連団体は来年4月に介護報酬改定でのプラス改定をめざして、国会議員や厚生労働省に対するロビー活動を展開している。国が介護職の月6000円の賃上げを表明したので、財源確保のためにプラス改定に向かって調整が進むのかもしれないが、改定について財務省の見解は厳しい。
 さる11月20日、財政制度等審議会が取りまとめた「令和6年度予算の編成等に関する建議」は介護報酬改定について「必要な介護サービスを提供しつつ、国民負担を軽減する観点から報酬の合理化・適正化を進めていくことが不可欠」と主張した。合理化はコストダウンを意味するのでマイナス改定を示唆している。
 介護職の処遇問題も取り上げて、「介護職員の処遇改善が求められているが、介護報酬の改定率を単に高くしただけでは問題の解決にはならず、介護事業者内の経営者を含めた所得格差是正にも踏み込んだ取組が必要である」と指摘。この記述は、経営者は結構な報酬を得ているので、それを減額して従業員に廻せば改善を図れると言いたいようだ。
 さらに処遇改善加算の活用も強く求めている。
「介護人材の処遇改善については、処遇改善加算の活用により、多く事業所において賃上げが実施されている。引き続き、賃上げの呼び水として処遇改善加算を活用し、経営改善や生産性向上の取組を通じた成果とあわせ、職員の賃金へ適切に還元すべきである」
 財務省は、介護報酬のプラス改定を要望する以前に、打ち手があるだろうと介護業界に呼びかけている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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