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オープンAIの従業員9割超、アルトマン氏の復帰望む

米メディアは20日、米オープンAIのサム・アルトマン氏(38)の最高経営責任者(CEO)退任を巡って、同社従業員の9割超が同氏の復帰と全取締役の辞任を求める署名運動に賛同したと報じた。取締役会が同意しない場合、従業員らはアルトマン氏を追ってマイクロソフト(MS)に転職すると訴えている。
 報道によれば、オープンAIの従業員約770人のうち700人以上が文書に賛同したという。従業員らは20日までにアルトマン氏の復帰を求める文書を取締役会に送付。アルトマン氏と会長のグレッグ・ブロックマン氏の再任と、全取締役の退任を求めている。
 従業員らは取締役会を「監督能力がないことは明らか」と批判。同意しなければMSに移りアルトマン氏らとAI開発に従事する可能性があるとした。
 アルトマン氏らを事実上の解任に追い込んだとみられている取締役も署名運動に賛同しており、「チャットGPT」を開発した新興企業の先行きは混迷の度合いを増している。
(読売新聞 11月21日)

 このクーデター劇は、マイクロソフトがアルトマン氏をAI開発に余人をもって代えがたい人物と判断して仕掛けたのか、それとも従業員が自発的に動いてマイクロソフトに話をつけたのか。
 その後、早くもアルトマン氏がCEOに復帰すると報道された。ほどなく舞台裏が明らかになるだろうが、この一件は「会社は誰のものか?」という根本的な問いを投げかけている。
 法的には会社は株主の所有物であり、株主に委任を受けた取締役が経営にあたり、従業員は取締役の支配下に置かれている。ただ稼ぐのは従業員で、稼ぎ手が不在になれば株主も取締役も困窮し、会社が廻らなくなってしまう。
立場が下位にある従業員が結束して取締役に反旗を翻せば、途端に弱者から強者に転じるのだ。会社は法的には株主のものだが、現場は従業員のものである。取締役の人選に関わる指名委員会は従業員の各階層と対話をしなければ、候補者を適正に評価できないだろう。その時間を確保できるかどうかはともかく、定性的な評価はヒアリングで得た情報が欠かせない。
むしろ取締役の人選は指名委員会よりも、候補者の実態を知っている従業員のほうが適しているのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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