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物流の2024年問題、運転手の3割が「知らない」 民間調査

社会保険労務士向けの業務効率化サービスを展開する「KiteRa」(東京都港区)は、トラック運転手の残業規制強化に伴う「2024年問題」に関する実態調査の結果をまとめた。回答した運転手のうち約3割が「(24年問題を)知らない」といい、一部に理解が進んでいないことがわかった。
 調査は9~10日、20代以上のトラック運転手の男女600人を対象にインターネット経由で実施した。その結果、回答者の34%が「物流の2024年問題を知らない」と回答した。また、77%が「勤務先の研修や説明会などが何も行われていない」と答えた。  
また、回答者の1割弱が月80時間以上の時間外労働をしていることもわかり、現状のままでは上限規制に違反する可能性が高いケースが一定数に上りそうな懸念も透けて見えた。  時間外労働が発生する原因を聞くと、人手不足や仕事量の多さ、残業が当たり前の環境であることなどが回答数の上位に入った。また、回答者の約6割が勤務先の就業規則を見たことがないとした。  
24年問題に備え、働きやすい環境づくりやコンプライアンス(法令順守)意識の向上など、トラック業界の課題解決が急務といえそうだ。(毎日新聞 10月28日)

 物流2040年問題について運転手の3割が「知らない」という背景には、経営者の問題意識が希薄であることが挙げられるのではないのか。
 先ごろ物流専門家を取材する機会があった。物流2040年問題のうち、残業時間削減の取り組みは二極化しているという。すでに残業時間削減の対策に取り組んでいて「2024年4月1日に規制が始まっても全く平気」という会社もあれば、残業時間が年間1500時間を超えている運送会社で「960時間以内への短縮は無理なので摘発するなら摘発して」と構えている経営者もいるそうだ。
 経営者がこの問題を社内に周知させたうえで、危機感をもって対策を講じなければ、運転手もなかなか知る機会を得られない。通常、労務管理に関する法改正は職場で通知されるものだ。政府の議論をフォローし続け、働き方の改善に問題意識を持つようになる社員はごくわずかだろう。労務担当者も業界団体や社会保険労務士から通知されて、はじめて知ることが多いのではないだろうか。
 運転手と同様に2040年に残業規制が適用される医師も、医療機関で通知され、説明会が開かれて残業対策を講じている。運輸業界の通知体制はどうなっているのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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