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中小の事業承継、地銀が支援 企業・人材のマッチング強化

経営者の高齢化や後継者難で、中小企業の廃業が増えている状況に対応して、地方銀行が企業の買い取り先を探す「事業承継・M&A(合併・買収)」業務を強化しています。事業承継支援を目的にしたファンド組成などを手掛けているほか、営業エリア外の企業とのマッチングができるプラットフォームを活用するなど、デジタル技術の活用にも熱心です。
岐阜市に本店を置く十六フィナンシャルグループ(FG)は今年7月、日本M&Aホールディングス(HD)と、中小企業の事業承継を支援する「NOBUNAGAサクセッション」(岐阜市)を設立しました。同グループの営業基盤である岐阜県と愛知県でも、中小企業の後継者難は深刻です。新会社は企業に後継人材を紹介したり、他社とのM&Aを仲介したりして、地域経済の活性化を目指そうとしています。
事業承継を支援するため、ファンドを設ける動きも広がっています。最近では秋田銀行が10億円規模の「あきぎんNEXTファンド」の組成を発表しました。「ベンチャー企業や事業承継の課題を抱える企業」を、出資や株式取得を通じて支援する計画です。
(日本経済新聞 10月16日)

 M&Aの実施件数はまだ少ないのですが、その理由は3つ考えられる。
 第一は、M&Aに対する経営者のリテラシーが低いこと。事業承継対策には何をすればよいのか、M&Aとは何なのかという知識が乏しいために、自社がM&Aの対象になり得ないと思い込んでいるのだ。
 第二は、税理士や金融機関などが事業承継の選択肢にM&Aがあることを経営者にきちんと伝えてこなかったこと。経営者と同様にM&Aの知識が乏しいために、伝えることができていないようだ。
 第三は、過去にM&A業者が少なく、報酬も高かったことである。
こうして、長年にわたってM&Aの需要が放置されてきたともいえる。一方で、買い手側企業は経営意欲が旺盛なので、成長戦略のひとつにM&Aがあることを認識して、検討する企業も増えている。
経営者がきちんと理解すれば、M&Aの実施件数は一気に増えていくのでだとう。例えば税理士や銀行が、廃業を検討している経営者に対して「廃業するぐらいなら、一度、M&Aを検討してみましょう」と打診してM&Aの実態を伝えれば、経営者の考え方は変わるんではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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