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崩壊寸前の路線バス 「2024年問題」で運転手不足に拍車

先月、日本バス協会はバス運転者数の今後の推移を公表しました。2017年には13万人以上いたバスの運転手は年々減少し、2030年には9万3000人にまで減る見込みです。そして、路線の維持に必要とされる運転手の人数は今も12万人ほどとされますが、既に不足が出ています。
この問題に拍車をかけているのが、いわゆる「2024年問題」です。2024年からは時間外労働の上限規制や休憩時間の改正が行われるため、運転手の働く時間が今よりも短くなります。
つまり、来年からは路線を維持するためには、運転手の数が今よりさらに必要になるのです。こうしたことから、2030年には3万6000人の運転手が足りなくなるとの試算となっています。
運転手不足の背景には、他の要因もあります。
国土交通省によると、昨年度のバスの運転手の平均年齢は53.4歳だといい、今後、大量に退職者が出ると予測されています。
実際、運転手不足のために全路線廃止を決めたバス事業者も出てきています。大阪・富田林市に本社を構える「金剛バス」は、12月20日をもって15路線すべてを廃止することを決めました。
(日テレNEWS 10月9日)

2024年問題はトラック輸送も直面している。何も対策を講じなければ、2024年度には14%、2030年 度には34%の輸送力が不足する可能性がある。この問題意識をもって、さる10月6日に「物流革新緊急パッケージ」が閣議決定した。パッケージの柱は①物流の効率化②荷主・消費者の行動変容③商慣行の見直し。
人手不足対策では「トラック運転手の労働負担の軽減、担い手の多様化の推進」「荷役作業の負担軽減や輸送効率化に資する機器」「システムの導入等により、快適で働きやすい職場環境の整備を促進」「労働生産性の向上に資する車両を運転するための免許の取得等のトラック運転手のスキルアップを支援」が示された。
さらに運転手の賃金アップ策として「適正な運賃の収受、賃上げ等に向け、次期通常国会での法制化を推進」「大手荷主・物流事業者の荷待ちや荷役時間の短縮に向けた計画作成の義務付け、主務大臣による指導・勧告・命令等」「 大手荷主に対する物流経営責任者の選任の義務付け」――などが示された。
賃上げには原資になる運賃の値上げが必須だが、政府は、トラックGメンによる荷主・元請事業者の監視体制の強化や、現下の物価動向の反映や荷待ち・荷役の対価等の加算による標準的な運賃の引き上げなど、効力を期待できる施策に打って出る。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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