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経営中枢にプロ人材 フリーの専門家、4年で3倍

フリーランスの人材を経営の中枢で活用する企業が増えてきた。専門的な知識を持つフリーの「プロ人材」は4年前に比べて3倍に増え、経営計画の策定や人事制度改革など担い手を正社員で固めてきた領域も任されつつある。人材戦略が優秀な社員の囲い込みから外部人材の他社との「シェア」に変わり始めた。
「全て自分の責任で仕事ができる。会社員のときよりも手応えがある」。梅本哲平さん(38)は2021年9月から個人事業主として非鉄金属大手から事業戦略の策定を請け負う。契約は3カ月ごとに更新され、中期経営計画を個別事業に落とし込んで具体化することが主な業務だ。週5日、役員や経営企画部長らと打ち合わせて仕事を進める。
PwCコンサルティングや専門商社で事業戦略づくりなどに12年間携わった。20年5月に独立。年収は会社員時代の2倍近くにまで増えた。
フリーのプロ人材を業務に活用する企業が増えている。みらいワークスやパーソルキャリアなど人材仲介大手5社の登録者数は22年に約23万人となり、18年比約3倍になった。企業からの業務の依頼件数も4倍に伸びた。
プロ人材には個人事業主のほか、会社に勤めながら副業として他社の仕事をする人も含む。
(日本経済新聞 10月8日)

 この記事を読むと、コンサルティング会社に委託していた業務をプロ人材に委託しているようだ。通常、個人に委託すれば法人に比べて報酬は安くなる。しかも有力なコンサルティングに委託すると主導権を握られてしまいがちだが、相手が個人なら主客転倒を回避できる。面倒な契約手続きも省ける。
 個人への委託には、委託期間中に体調不良などで業務遂行に支障が出た場合に、バックアップ体制が不在というリスクがともなう。万が一のリスクも視野に入れて、いざというときには社内で引き継ぐことも想定しているはずだ。しかし、あくまで例外なので、ほとんど考えない。
水準以上の品質を期待できるのなら個人への委託にシフトするのは自然な流れである。副業の解禁によって、各分野の第一線で働く現役を傭兵として活用できるようになった。アウトプットが秀逸ならば、報酬の引き上げや業務量の増加によって囲い込むことも考えられる。
 プロ人材は外注先だが、単純作業を委託する下請けではない。専門性の高い業務を委託するのが、そもそも社内にプロ人材に匹敵する社員はいないのか。いないのならプロ人材との取引を通じて、ノウハウを吸収したい。ノウハウの調達手段としてもプロ人材の活用は有効である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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