Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

深刻な「職人不足」で淘汰加速 建設業の倒産、前年比4割増

建設業の倒産増に歯止めがかからない。2023年に発生した建設業の倒産は、8月までに1082件発生した。既に22年通年の件数(1204件)に迫るほか、8月までの累計で1000件を突破したのは2017年以来6年ぶりだった。また、6月に単月で160件に達し、2014年10月以来約9年ぶりの高水準となった。このペースで推移すれば、年内の建設業倒産は1600件を超え、過去5年で最多となることが確実となった。  
倒産の要因としては、引き続き「物価高」の影響が続いた。22年に比べると価格の上昇は穏やかなものの、鉄骨や木材などの建設資材価格の上昇が止まらず、建設業倒産のうち物価高が要因となったものは最大で2割に迫った。  
さらに、近時は職人の高齢化に加え、若手や新卒人材の応募が少ないなど、人材不足が目立つほか、給与に不満を持つ建築士や施工管理者など業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職・独立により、工事の受注や、施工そのものがままならなくなった中小建設業者の倒産が目立ち始めた。
(帝国データバンク 9月10日)

国土交通省の「最近の建設業を巡る最近の状況」によると、建設業の就業者は1997年の685万人がピーク。以来、下降をつづけて2021年は482万人にまで落ち込んだ。25年には、建設業の労働人口が約90万人不足すると予測されている。外国人労働者で補える数ではない。
 このすう勢を踏まえて、19年に新・担い手3法(品確法と建設業法・入契法の一体的改正)が公布・施行された。
 働き方改革に関する内容は、品確法には「発注者の責務」として「適正な工期設定(休日、準備期間、天候等を考慮)」「施工時期の平準化(債務負担行為や繰越明許費の活用等)」「適切な設計変更(工期が翌年度にわたる場合に繰越明許費の活用)」が明記された。
 さらに「受注者(下請含む)の責務」とし「適正な請負代金・工期での下請契約締結」が明記された。
 建設業法・入契法には「工期の適正化」として「中央建設業審議会が、工期に関する基準を作成・勧告」「著しく短い工期による請負契約の締結を禁止(違反者には国土交通大臣等から勧告・公表)」「公共工事の発注者が、必要な工期の確保と施工時期の平準化のための措置を講ずることを努力義務化」が明記された。
 「現場の処遇改善」も盛り込まれ、「社会保険の加入を許可要件化」「下請代金のうち、労務費相当については現金払い」が明記された。
 それでも人手不足解消の道筋は描けないほど深刻な状況がつづいている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。