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非正規公務員の処遇改善 神戸市、年収を5割増

自治体が非正規の公務員である「会計年度任用職員」の処遇改善に乗り出している。神戸市は事務職員の年収を2024年度から21年度比で最大5割増の300万円に引き上げる。高知市は正規職員への転換希望者に限り、採用試験の年齢制限を59歳に広げた。民間企業で賃上げが進むなか、スキルを持った人材を処遇改善でつなぎ留める。
会計年度任用職員は1年の任期で働く非正規の地方公務員。多くの自治体は総務省が目安として示すマニュアルに沿って、人事評価のみで2回まで再任用し、採用試験に合格すれば3回目以降の再任用を認めている。総務省によると、全国で約62万2000人(20年4月時点)が勤務し地方公務員の4分の1を占める。
非正規公務員や研究者らでつくる民間団体「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」が22年に実施した調査によると、回答者の8割が年収250万円に満たなかった。正規職員の平均年収は600万円を超えており、年収格差から「官製ワークングプア」との批判も根強い。
(日本経済新聞 9月5日)

非正規公務員が増えた背景に自治体の財政難が挙げられる。民間企業と同様に「非正規=雇用の調整弁」としての雇用だが、低賃金で不安定な雇用がつづけば、人手不足を解消したい民間企業に人材が流れて、行政サービスの質低下を招いてしまう。
非正規公務員が多く占める職場のひとつに公立図書館がある。公益社団法人日本図書館協会の調査では、国内全ての公立図書館の職員の76%を非正規職員が占めている。
この実態を踏まえて、同協会の植松貞夫 理事長と 同協会非正規雇用職員に関する委員会の小形亮委員長は連名で、今年5月、都道府県知事・市長・東京23区長に要望書を提出した。
要望した内容は次の4点である。①非常勤職員、臨時職員の賃金と労働条件について図書館職員の専門性の観点から改善②会計年度任用職員制度の制定の趣旨に即した適正な運用と、雇用更新時の任用では、公募ではなく勤務実績による能力実証で行なう③委託業務や指定管理者に委ねる図書館の管理業務に従事する職員の適正な労働条件等を確保④指定管理者の募集時における指定管理料の算定では、図書館サービス水準の向上が期待できるよう必要にして充分な人件費を見込む。
労使が一体となって要望したことには、それだけ非正規職員と臨時職員の処遇が危急存亡の秋にさしかかっている現実が反映されている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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