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そごう・西武の全店舗と雇用維持 米ファンド、改装に600億円

米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが、買収した百貨店そごう・西武の全国10店舗と従業員の雇用について当面維持することが5日、分かった。
西武池袋本店(東京都豊島区)に家電量販大手「ヨドバシカメラ」が出店するなど、計600億円を投じて改装し、収益力の底上げを図る。  
そごう・西武は首都圏の7店舗に加え、西武秋田店(秋田市)、西武福井店(福井市)、そごう広島店(広島市)を展開している。フォートレスは、苦戦する地方店についても現時点で維持する方針だ。当初改装と設備投資に200億円以上をかけるとしていたが、大幅に積み増して各店のてこ入れを急ぐ。  
フォートレスと組むヨドバシホールディングス(東京)は、池袋本店などの土地を3000億円弱で取得し、そごう千葉店(千葉市)と西武渋谷店(東京都渋谷区)への出店も検討している。池袋本店では、売り場のおよそ半分をヨドバシが占める見通し。改装などで余剰人員が生じる場合、フォートレスの投資先企業や、前の親会社セブン&アイ・ホールディングス傘下の事業会社で受け入れる方向だ。
(時事通信 9月5日)

フォートレスは雇用維持を掲げたストライキまで起こされて買収した直後に、人員整理を打ち出すはずがない。軋轢を避けるために雇用維持を表明するのは当然である。ただ、1年後とも言われる西武百貨店池袋本店へのヨドバシカメラの出店が実施されたら、雇用がどうなるかは不透明だ。
売り場が削減されば余剰人員が発生する。西武百貨店の従業員も、雇用の維持が当面の措置であることぐらい覚悟しているだろう。
そもそも人員削減は経営再建の常とう手段である。希望退職を募集せずに、ミスマッチ必至の人事異動を行なって依願退職を誘発するなど、雇用維持を装いながら人員削減を行うケースは珍しくない。
そのとき、どう判断するのか。異動を受け入れて在籍を選ぶのか、退職に踏み切るのか。経営再建を目的に買収されたいま、たぶん定年まで百貨店の仕事ができると考えている従業員はいないだろう。
一方のフォートレスとヨドバシカメラが、行き過ぎた株主資本主義ではなく公益性に配慮するかどうかも不透明だ。一連の問題の発端は、地元の豊島区が、地元商店会などの声を受けてヨドバシカメラの低層階への出店を控えるように要望したことにある。「地域あっての店舗経営」が本筋だが、小売業の歴史を振り返ると、資本の論理でなりふり構わず勢力図が塗り替えられてきた。
1年後はどうなっているのだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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