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銀行、事業承継のプロ育成 M&Aの増加に対応

大手銀行が事業承継の専門知識を持ち、高度な提案ができるプロ人材を育成する。みずほ銀行は3年間で100人を育てるほか、りそな銀行は10月に事業承継とM&A(合併・買収)のチームを統合し、200人体制とする。中堅・中小企業の経営者の高齢化が進み、これまで少なかった親族外承継のニーズが増えており、潜在的な案件を掘り起こして手数料収益の増加につなげる。
みずほ銀行は今春、専門人材の育成を目的とした「事業承継マイスター制度」を導入した。法人の営業担当者に提案書の書き方などを指南する1年間の研修を実施。一定のスキルを習得した担当者に社内資格を認定し、対外的に肩書を名乗れるようにする。3年間で100人を育てる計画で、全国の中堅・中小企業のオーナーに事業承継を提案できる体制を整える。
三菱UFJ銀行は4月から事業承継と資産承継のそれぞれに強みを持つ専門部署の連携を強化した。高齢の経営者には、会社の譲渡と遺産相続に対応した一体的な取り組みが必要なためだ。
(日本経済新聞 8月24日)

M&Aアドバイザーは、日本ではディール実績など経験の豊富な人材はまだ少ないという。アドバイザーに求められるのは、経験値が豊富かどうか、相談してきた会社の実態や戦略を熱心に理解しようとしているかどうかなどである。経験値が豊富で、熱心に取り組むアドバイザーでないと勤務先の看板も活用できない。
M&A仲介会社の現状はどうだろうか。ベテランのアドバイザーはこう話す。
「売り手側企業をモノのように取り扱う仲介会社も決して少なくありません。そういう業者の担当社員は往々にして、依頼主に、早く売却しましょうとか、早く基本合意を結びましょう、と急かしてくる」
早く手離れをして手数料を稼ぎたいのだが、その背景には厳しい手数料獲得ノルマがある。なかには臆面もなく「今月末までに契約しないと目標を達成できないので、何とかお願いします」と拝み倒してくるような人もいるという。およそ顧客目線とは程遠い実態がある。
多くの場合、売り手側企業の経営者にとってM&Aは初めての経験だ。銀行に相談すればよいのか、仲介会社に相談すればよいのか。原則は複数から選定すること。確認することは「成約件数は年に何件か」「どのようなルートで買い手を発掘しているのか」「どのような案件規模・業種で成約実績を持つのか」「どのような譲渡スキームを手がけてきたのか」などである。
これらの要件は銀行が育成する事業承継のプロ人材にも問われてくる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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