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シャープ、早期退職を拡大 加算額増、一般社員も対象

シャープが管理職向けに導入した早期退職制度を拡大し、9月から55歳以上の一般社員にまで対象を広げることが18日、分かった。管理職向けには退職金に最大6カ月分の給与を加算していたが、一般社員向けは12カ月分とする。同社は液晶パネル事業の苦戦で業績不振に陥っており、早期退職を促すことで構造改革を加速する狙いがあるとみられる。
 シャープは過去の経営危機時に希望退職を募集したことはあったが、4月に早期退職を初めて制度化した。「人員削減が目的ではなく、社員の次のステップを支援するため」と説明し、55歳以上の管理職約700人を対象としていた。
 9月から実施する「ネクストキャリア支援制度」では、55歳以上かつ勤続10年以上の一般社員も対象とし、退職金に12カ月分の給与を加算する。60歳以上の再雇用社員も対象で、特別慰労金を支給する。同社は「自律的なキャリア形成を支援する福利厚生だ」と拡大の理由を説明している。
(共同通信 8月18日)

 早期退職の対象年齢の社員は、55歳を超えている場合、残れるのなら残ったほうがよい。収入ダウンだけでなく、この年齢で新しい組織になじむのは容易ではなく、ミスマッチのリスクも大きい。柔軟性を心がけても、身についた習性は心がけどおりに改まるものではない。
 雇用側は55歳以上の転職希望者をどう見ているのだろうか。マンパワーグループが2023年1月、企業の人事担当者400名を対象に実施した調査結果をみると、なるほどと頷きたくなる内容だ。
55歳以上の社員に対して感じている課題で、最も多かったのは「仕事へのモチベーションが上がらない / 低下している」(17.3%)。以下、「マネジメントがうまくできない / マネジメント能力が不足している」(11.8%)、「成長意欲を失って、周囲に悪影響を与えている」(11.3%)、「社内の変化・改革についていけていない」(10.8%)とつづく。
会社員として旬の時期を終えている年齢だから、リスキリングによって多少は上向いても限界がある。しかし雇用する以上、当然ながら要求水準は高いのである。
55歳以上の社員に求めることは「経験豊富あるいは高いスキルを持っている」(36.1%)「年代を問わずに関係性を築ける」(29.2%)、「物事や環境に柔軟に対応していく姿勢がある」(27.5%)。これらは55歳以下でも、さらには20代の社員にも求めている内容だ。
人手不足で55歳以上を中途採用する場合、極論をいえば、経験以外をあまり望まないほうが現実的ではないのか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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