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最低賃金引き上げへの対応、企業の7割が賃上げ

2023 年度の最低賃金の引き上げを受けて、何らか「対応する」企業は 83.2%、「対応しない」(10.4%)を大きく上回った。 具体的な対応策としては、「もともと最低賃金よりも高いが、賃上げを行う」(46.5%)が最も高かった。
次いで「最低賃金よりも低くなるため、賃上げを行う」(25.0%)がつづき、最低賃金の引き上げを受けて「賃上げ」を行う企業1 は、70.6%に達した。 賃上げの理由として、「今まで就業している人はすでに今回の最低賃金を超えているが、新しく採用する人との差がなくなるので引き上げざるを得ず、負担が増える」(化学品製造)と在籍中の従業員の待遇改善や、「有能な人材へは最低賃金を大きく超える対応をしており、これからも同様の対応 をする」(飲食店)といった人材確保を目的とする声があがった。
 一方で、「最低賃金が上がっても 130 万円の壁があるので、パートさんの働く時間が減るだけ」(運輸・倉庫)と「年収の壁」問題のほか、「パート従業員の時給はほとんどが 1,000 円以下なので改定 されれば上げざるを得ないが、物価高・コスト高で利幅が取りにくいなか、さらに追い打ちをかけられるようなもの」(飲食料品・飼料製造)という実情も聞かれた。
(帝国データバンク 8月9日)

 最低賃金の引き上げは中小企業にとっては相当な負担である。昨年10月に最低賃金が32円引き上げられて863円になった愛媛県。最低賃金の引き上げは2年連続で、32円は過去最大の引き上げ幅となった。
 企業にはどんな影響を及ぼしたのだろうか。
いよぎん地域経済研究センターの調査では、最低賃金の引き上げが「マイナスの影響がある」が4割近くを占めた。部門別では、製造業が 51.8%と非製造業の 33.1%を上回った。具体的な影響としては「人件費の増加による採算の悪化」(81.1%)が最も多かった。
賃金引き上げへの対策は、「事務作業のスリム化・効率化」(43.9%)、「コスト構造全般の見直し」(34.2%)、「残業時間の削減」(31.7%)とつづいたが、限界があるのではないだろうか。
調査結果を受けて、同センターは次のように見解を述べている。
「原材料やエネルギー価格の高騰が続いているにもかかわらず、販売価格への転嫁は思うに任せない状況だ。この状況下での最低賃金の引き上げが、重荷となる企業は少なくない。物価上昇の影響を緩和するだけの賃上げを行うには、適正な価格転嫁の実施が不可欠である」
 ただ、サプライチェーンの強化に人件費負担のカバーまで視野に入れる企業はまずないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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