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万博工事、繁忙で労働規制除外「認められず」 厚労相

加藤勝信厚生労働相は28日の閣議後の記者会見で、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の準備工事の遅れを巡り、運営主体側が時間外労働の上限規制の適用除外を求めていることについて「一般的には単なる業務の繁忙では(除外は)認められない」との認識を示した。労働規制は24年4月に適用されることになっている。
規制の適用除外は万博の運営主体である日本国際博覧会協会(万博協会)の幹部が政府側に要望した。万博のパビリオン建設を巡り、人手不足などで完成が開幕に間に合わないとの懸念が出ている。独自にパビリオンを建てる国・地域はおよそ50あるが、着工前に必要な申請は28日までに1件にとどまる。
西村康稔経済産業相は28日の会見で、万博協会の要望に関する検討状況について「申し上げる段階にない」と述べるにとどめた。
24年4月に建設業でも時間外労働の上限が原則年360時間まで、労使合意があれば年720時間までになる。「2024年問題」と呼び、人手不足への対応が課題として指摘されている。
(日本経済新聞 7月28日)

時間外労働の上限規制の適用除外を求めることは、いわば時間外労働の治外法権を求めることである。働き方改革を挑発するような要請で、しかも労働者の犠牲を前提としたような工事体制に、政府は到底容認できまい。モラルハザードを誘発してしまう。
7月28日付け産経新聞によると、吉村洋文大阪府知事は、残業規制について「働き方改革として重要な視点でつくられた。そのルールの中で何ができるかを考えるべきだ」と述べた。
 適用除外の要請に強く反発したのは、弁護士・学者・研究者など約350名および労働組合・市民団体約150団体を擁する民主法律協会(大阪市北区)である。
同協会は「2025年の万博開催のためには、労働者の健康や生命が犠牲となってもやむを得ないと言わんばかりの、今回の万博協会の要請は断じて許されない」「万博を予定通りに実施したいという思惑のために、法が定める上限規制の例外を安易に認めることは絶対にあってはならない」と断罪した。
ただ、7月30日付け朝日新聞によると、日本国際博覧会協会が、パビリオンの手続きが遅れている国・地域に対し、協会側が箱のような建物を建て、内外の装飾を任せる「建て売り方式」を検討しているという。時間外労働の適用除外が却下されることを想定して、別の選択肢も用意しているようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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