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建設業を襲う「2024年問題」 深刻な人手不足と倒産リスク

建設業界が「2024年問題」に揺れている。時間外労働に対する上限規制が来年4月から厳格化されるからだ。業界では就業者の減少や高齢化が進んでおり、時間外労働への規制が厳格化されれば1人当たりがこなせる仕事量が減少するため、人手不足にさらに拍車がかかる。大手、中堅企業は待遇の大幅改善や学校への売り込みなどで人材確保を図るが、下請け、孫請けの中小、零細企業の対応は容易ではなく、多くの企業が倒産の危機にさらされるとの指摘もある。
(中略)
 建設関連企業は今、若い人材の獲得に必死になっている。その背景には、同業界が直面する2024年問題がある。 建設業界の2024年問題とは、来年4月から時間外労働をめぐる上限規制が厳格化されることによって起きると予想される、深刻な人材難だ。政府は令和元年に始めた働き方改革で残業規制を強化したが、就業者の高齢化や、就業人数の減少が進み、長時間労働が常態化していた建設業界は対応に時間がかかるとして運送業などと並んで、5年の猶予を与えられた。
(産経新聞 7月23日)

日本建設業連合会は2017年に「週休二日実現行動計画」を策定し、22年度以降の活動として①23年度末までに4週8閉所の実現(土日閉所にかかわらず年間104閉所の実現)をめざす②24年度を4週8閉所定着確認の1年とする③「週休二日」のさらなる定着を図るため、「4週8休」の確実な取得に向けた取り組みを推進する――などを掲げた。
しかし長時間労働の是正には人材確保が大前提である。戸建住宅の建物検査・地盤調査を行なうジャパンホームシールド(東京都墨田区)が2023年4月に「建設業における2024年問題と働き方の意識調査」を実施したところ、人材確保に優先すべき施策として最も多かったのが「給与体系の見直し」で、69.9%を占めた。次いで「労働環境の改善」が59%、「組織や業務の見直し」が47.6%だった。
給与体系の見直しとは、要は給与水準の向上だが、建設業の給与水準は決して低くない。
21年賃金構造基本統計調査によると、建設業従事者の平均賃金は月額33万3200円。全労働者平均の30万7400円よりも高いが、一方で労働時間は長い。16年度のデータだが、
全産業の年間1720時間を大幅に上回って年間2056時間に達した。
 労働時間の短縮には施主の協力が不可欠である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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