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転職へ学び直し 動く公的支援 受講や職業紹介、最大56万円

転職にあたり7割は何も準備せず、スキルを磨いたり資格を取ったりする人は1割程度にとどまる。日本で乏しい転職前のリスキリング(学び直し)を公的に支援する取り組みが8月にかけて動き出す。転職できたら最大56万円の支援を受けられる。硬直した労働市場が動く転機になるか。
経済産業省が「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を本格的に始める。正社員や契約社員、アルバイトなどとして働いている人が支援対象だ。利用する人は国の認定を受けた人材サービス企業を通じ、転職に向けたキャリア相談と、1年以内のリスキリング講座、職業紹介などの支援を一体で受ける。利用者は事業者経由で受講費用を軽くできる。転職を目指していない人は対象にならない。
 新制度は753億円の予算を確保し、3年間で33万人の支援を目指す。国が民間企業で働く人の転職を促すのは、日本では働く人の移動が乏しいことが経済の課題になっているためだ。
 厚生労働省が2022年に短期失業者の動きから分析したところ、労働者の移動はカナダやスウスーデン、米国が活発で、日本の活発度合いは経済協力開発機構(OECD)平均の半分に満たなかった。
(日本経済新聞 7月20日)

「骨太方針2023」は「リスキリングによる能力向上支援」「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」による「三位 一体の労働市場改革」を行なうと表明した。要は転職しやすい環境を整備するのだが、転職サービス会社は勢いづいて、ますます転職を促す広告宣伝活動を強化していくに違いない。
 転職を繰り返さないと時代遅れという風潮も強まっていくが、転職はキャリア形成の選択肢のひとつなのだから、過剰にあおり立てる必要はない。
 骨太方針は「一人一人が自らのキャリアを選択する時代となってきた中、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自らの意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要」と主張する。
そのうえで「企業経由が中心となっている在職者への学び直し支援策について、5年以内を目途に、効果を検証しつつ、過半が個人経由での給付が可能となるよう、個人への直接支援を拡充する」と方針を展開する。
企業経由では該当社員に費用が適正に行き渡るとは限らず、個人への直接給付が理想だが、事務処理の仕組みをどう組み立てるのだろうか。気になるのはこの点である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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