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塩野義製薬が希望退職を募る 50歳以上、200人対象

塩野義製薬は10日、希望退職を募ると発表した。対象は50歳以上で、勤続年数5年以上の社員。募集人数は約200人。8月1日から9月20日まで募り、10月31日付で退職する。通常の退職金に支援金を加算するほか、再就職を支援するという。
塩野義の令和5年3月期連結決算は、同社が開発した国産初の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」などが貢献し、売上高に当たる売上収益、最終利益が、いずれも過去最高を更新していた。一方で、感染症領域を中心としたグローバル化をより一層進めていく改革の最中で、中長期的な経営方針としてグローバル人材の育成などを打ち出している。同社は「過去最高益を記録する中、退職や転身を希望する従業員を手厚くサポートできる状況にある」と説明している。
(産経新聞 7月10日)

塩野義製薬は希望退職募集の理由を次のように説明している。
「ビジネスモデルを変革しながらSTS2030 Revisionを達成するためには、全ての業務において新たなケイパビリティの獲得に貪欲に取り組む必要がある。当社は、前例のない挑戦に果敢に挑み、グローバルな競争に勝ち抜ける強い個人を育成するとともに、人材の多様性を最大限に活かす組織の構築を進めるなど様々な経営基盤の強化に取り組んでいる」
そのために希望退職を行なうのだという。
「グローバルな成長や新規事業の確立・成長の実現に向けた人材ポートフォリオの見直しを加速させるため、本プログラムを実施することとした」
リストラは人員削減と同義になってしまったが、本来の意味は事業再構築である。業績好調時に次世代の事業モデルを創出するには、次世代を担う社員を主力戦力に切り替える世代交代も必要だ。それを象徴するような塩野義製薬の希望退職募集である。
STS2030 Revisionを達成させるには 2030年時点の主力戦力を中心に社員構成を見直す必要があると判断したのだろう。
象徴的な施策が実行されると、後につづく企業が現われる。ただ、希望退職で会社を去ってもらうには相応の割増退職金を支払わないと、無用な恨みをかうだけである。一方の
50歳以上の社員は「要らない」と表明されたのだから、踏みとどまっても前途は芳しくない。条件が見合うのなら会社を離れてもよいのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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