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「転職決まればお祝い金」は違反行為、実態調査へ 医療・保育の分野

介護・医療・保育分野の人材紹介業者が、働き手に「お祝い金」などを出して転職を促す違反行為が広がっているとして、厚生労働省は実態調査に乗り出す。人手不足の業界につけこんで紹介手数料を稼ぐ悪質な業者を取り締まる狙いだ。
これらの分野ではハローワークで働き手を十分集められず、人材紹介を活用する場合も少なくない。紹介手数料は一般的に年収の3割前後が相場ともいわれる。  
関係者によると、業者がある施設に紹介して数カ月の働き手に「職場に満足していないなら転職してはどうか。成功したらお祝い金を数万円出す」などと持ちかけ、別の施設を紹介するケースがあったとされる。  
お祝い金を出して転職を促すことは、すべての業種において、2021年4月に職業安定法に基づく指針で禁止された。  
だが厚労省が21年度に人材紹介業の約4300事業所に定期的な調査を行ったところ、お祝い金に関する違反が8件見つかった。罰則がないため、「今も横行しており、職員がすぐ

に仕事を辞めてしまうことも多い」(全国老人福祉施設協議会の田中雅英副会長)という。
(朝日新聞デジタル 6月29日)

看護師と看護補助者の中途採用者に対して入職祝い金として20万円を支給している病院の看護部長に、支給の理由を聞いたことがある。
「人材紹介会社に1人につき100万円単位の手数料を支払うことが疑問なので、直接雇用に徹して、入職に伴う経費を補助する準備金という趣旨で20万円を支給することにした。それに紹介会社に支給するよりも、本人に支給したほうが納得感もある」
 この病院が支給する入職祝い金の退職職種は看護師と看護補助者に限定され、他の職種には支給していない。それだけ看護職は人手不足が厳しいのである。
 ただ、人材紹介会社が転職祝い金を支給するのはどうか。転職をあおり立てているようにも見える。キャリアアップやキャリアチェンジのための転職ならどんどんサポートすればよいが、テレビや動画に流れるCMは「ともかく転職しよう!」とあおっている。
これだけ繰り返し流れれば、意識に刷り込まれてしまうのではないだろうか。1990年前後にさかのぼるが、カード破産が社会問題に進展した1990年前後に、カードを使ってハワイ旅行に行こうとあおり立てたテレビCMが連日流れていた。人材紹介会社のCMを目にするたびに思い出す。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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