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AGCや凸版印刷など賃上げ長期持続、なぜ?

物価高や人手不足を背景に、日本企業の賃上げが相次いでいます。2023年の春季労使交渉では基本給の水準を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の要求が相次ぎ、要求のあった企業のベア実施率は9割に迫りました。
足元では持続的な賃上げに向けた動きが広がっています。AGCの平井良典社長はベアを含む賃上げを30年まで実施する方針を表明、凸版印刷は今後5年の賃上げ継続を決めました。AGCは22年7月に実施したベアにより新卒採用の応募者数が増えるなどの効果が出ています。凸版印刷はグローバルな人材獲得競争の観点から賃上げの継続が必要と判断しました。
日本の賃金は1990年代から伸び悩んでおり、主要7カ国(G7)でイタリアと最下位を争っています。モノやサービスを実際にどれくらい買えるかを示す実質賃金は、4月まで13カ月連続マイナスとなっており、物価高を補う賃上げは進んでいません。人手不足の中、優秀な人材をつなぎとめるには企業の賃上げ持続力が問われています。
(日本経済新聞 6月28日)

 
日本経済新聞の報道によると、凸版印刷は少なくとも2027年まで4%の賃上げを実施する。ゼンショーホールディングスは労使交渉で30年まで毎年ベースアップを実施すると合意。ハウステンボスは23年度に続き24年度も6%の賃上げを実施する方針。メンバーズは30年までに年収水準を20年比で6割増やす方針だ。
賃上げを政治主導で引っ張ったのは安倍晋三元首相のメッセージ力である。アベノミクスの評価はさままざまだが、経済の拡大させた功績は大きい。PWCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミストがアベノミクス前後の経済動向を分析したところ、次の差異が明らかになった。
名目GDPはアベノミクス前は493兆円、アベノミクス後は559兆円。企業収益は48・5兆円から83・9兆円、就業者数は6280万人から6682万人、完全失業率は4・3%から2・2%、倒産件数は1万2124件から8383件、国・地方の税収は78・7兆円から107・0兆円へと上向いた。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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