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介護と仕事の両立支援 離職の経済損失、年6500億円

政府が介護休業や休暇の取得を促進するのは、介護を理由にした離職が高止まりしているとの危機感がある。安定した家庭環境を保ち、企業の競争力を維持するため、誰もが介護と仕事を両立できるようにする。
介護離職は2010年代から急増、9万~10万人に達する年もある。経済産業省の試算によると介護離職による経済損失は年間約6500億円に上る。会社を支える40~50代の社員を失うことは企業にとって大きな痛手で、介護離職の防止は社会全体の課題といえる。研究会委員の武石恵美子法政大教授は「早い段階で社会的支援への理解を深めることが退職防止につながる」と指摘する。
大成建設は10年から従業員に各種制度の利用を促している。両立支援のパンフレットを40歳以上の社員全員に配ったり、家族も参加できるセミナーを開いたりしている。同社の介護休暇の取得日数は22年に13年比で2倍程度に増えた。
(日本経済新聞 6月27日)

介護離職による経済的損失は本人にとっても深刻な問題だ。人手不足の時代とはいえ、40~50代で退職して数年間のブランクを経て再就職先を探しても容易に見つからない。見つかっても収入の大幅ダウンは避けられない。半減することもあり得る。
介護離職の防止策として成果を出している介護保険サービスに定期巡回・随時対応型訪問介護看護がある。このサービスは、介護スタッフが毎日、利用者宅を起床時、朝食時、昼食時、3時、夕食時、就寝時の6回訪問。さらにさらにサービスが必要なときにケアコールを鳴らすと介護スタッフが訪問する。
ただ、事業者にとっては訪問するスタッフのシフトを組むことが大変で、特別養護老人ホームや介護老人保健施設を運営しているなど経営母体がしっかりしていないと、定期巡回サービスの運営は難しい。
しかもスタッフは訪問先で、すべて自分で判断して対処しなければならない。その苦労から多くの場合、施設系サービスから定期巡回サービスへの異動を希望する人は少ないという。
 このサービスの全国展開が望まれるのだが、現状ではなかなか進みそうにない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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