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薄れる「終身雇用優位」 中年層、転職希望5年で3割増

労働市場で終身雇用の優位性が薄れ、転職を探る中年層が増えている。総務省によると45~64歳の転職等希望者は2023年1~3月平均が378万人と、5年前の18年同期比で3割以上増えた。同じ会社で長く働く人と転職者との賃金差は縮小し、転職希望者への追い風となる。
総務省の労働力調査によると、転職希望者は各世代で増加傾向にある。22年の年平均は968万人と、18年比で16%増だった。なかでも定年前の人が多い55~64歳や団塊ジュニア世代の45~54歳で伸びが目立つ。
背景には定年延長や廃止でこれまでより働く期間が延びたことがある。定年後を見据えてキャリアを見直して早く転職を希望する人が増えている。
エン・ジャパンが22年11月から23年1月に実施した調査で、転職で実施したい点として経験や能力を生かせるポジションを求める人が50代で40%と、他の世代を大幅に上回った。
団塊ジュニア世代など就業者が多い世代は必ずしも役職や希望の仕事に就いてきたわけではない。三菱総合研究所の奥村隆一主席研究員は「もう一頑張りしたい時に、外の企業に目が向く」とみる。
(日本経済新聞 6月20日)

職業人生のゴールを何歳に設定するかで、ゴールまでつつがなく過ごすか、もう一花咲かせるのか、判断は分かれる。
定年延長によって、ゴールを65歳、あるいは70歳に設定する人が増えているようだ。50歳の会社員にとっては、あと15年から20年の職業人生が残されている。60歳まで現在の職場に勤務すれば、残りは5年から10年で、いまさら新たなキャリアには向かえない。もはやリスキリングに取り組む時期は過ぎている。
おのずと40代後半に差しかかって、現職での昇進昇格が頭打ちになれば、転職を考えるようになっていく。しかも転職を促す人材紹介会社の広告が、これだけ繰り返し展開されれば意識に染み込んでしまう。
ひとつの会社に長く務めるメリットは退職金額が増えることだが、見込み通りに受け取れるとしても時期は60歳時点だ。自分の前途が芳しくない場合、変動性の高い退職金をアテにして悶々とした日々を過ごすぐらいなら、転身を図ったほうがよいと考える人が増えているのだ。
一方、定年まで勤めあげる人が減れば、退職金のあり方も変わってくる。現金支給ではなくストックオプションを付与するなど新たな仕組みの導入が進むだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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