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終身雇用など日本の〝常識〟見直しへ 骨太方針閣議決定

政府が16日に閣議決定した「骨太の方針」では、低成長が続く日本経済の再生に向けた改革の方向性が打ち出された。改革が進めば一つの会社で長く働き続けるといった、これまでの日本の〝常識〟も大きく変わり、国民の暮らしにも影響が及ぶことになりそうだ。
最も力点が置かれたのが、労働市場改革だ。終身雇用や年功序列など日本型雇用は、成長分野への労働移動を妨げるといった弊害が顕在化。その結果、世界をリードする新たな企業は誕生せず、賃金も伸び悩むといった現状を生み出している。
そこで骨太方針では、「人への投資」の抜本強化を掲げ、労働者のリスキリング(学び直し)を後押しする。従来のリスキリングは主に企業が学びの機会を提供してきたが、労働者が主体的に取り組めるよう「個人への直接支援を拡充する」とした。労働者にとっては自分の意思で新たな能力を身に付け、仕事も選ぶことができるようになる。
企業間で人材の奪い合いが生じることで、賃金の持続的な引き上げにもつなげたい考え。同じ会社に長く勤めるほど退職金の税負担が軽くなる退職所得課税についても見直しを行う。
(産経新聞 6月16日)

岸田文雄首相は6月21日の記者会見で「賃上げが当たり前となる経済を着実にしたい。こうした想いを大切にして、具体的な政策を着実に進めてきた」と述べた。構造的賃上げというキーワードを提示しているが、中小零細企業をどこまで視野に入れているのだろうか。
中小零細企業が構造的賃上げを実施するには、下請け費用の向上を政策的に図る必要があるが、政府は民間取引の料金設定や支払い条件にまで介入できない。大手企業に限られた構造的賃上げになるのではないだろうか。
会見で岸田氏は、三位一体の改革として、リスキリング、日本型職務給の導入、成長分野への円滑な労働移動も取り上げた。このうち、なかなか進みそうにないのが労働移動である。労働移動を受け入れないと現場が崩壊しそうな介護業界では、人材確保をテーマにした研究会やシンポジウムで労働移動が話題になることはあまりないようだ。
介護現場で複数の介護福祉士から「人手不足で困っているとはいえ、オジサン世代の素人に来られても困る」という意見を聞いたことがある。他の多くの業界でも現場では、他業界からの中高年の労働移動について期待しているかどうかは不明だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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