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会社員助っ人、行政に刺激 市町村に出向、昨年度6割増

民間企業の社員が「地域活性化起業人」として全国の市町村で活躍している。会社員のまま知識や経験を行政に生かせる。総務省によると2022年度までの3年間で派遣人数は4倍となった。観光振興や特産品開発、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの専門人材として地域に新たな風を吹き込む。
制度は過疎地向けに14年度に始まり、21年度から対象の市町村を大幅に拡大。22年度は前年度比約6割強の618人が368市町村に赴いた。企業と市町村が協議し、入社3年目以上の社員を半年から3年にわたり出向させる。市町村が派遣人財の給与などとして企業に支払う経費には国が1人につき最大で年560万円を補助する。従来の仕事を兼務できるが、月の半分超は自治体で働く必要がある。
北海道内には全国最多の計92人が派遣された。ほぼ中央の上士幌町では22年12月から小さなコミュニティーバスが自動運転で町民を乗せて走る。全国でも珍しい市街地での定期運行を実現した立役者がソフトバンクの吉原文啓さん(55)。同年11月から活性化起業人として働く。
(日本経済新聞 6月10日)

企業から自治体に社員が助っ人として派遣される分野は交通と観光が多いという。自治体は地域経済の活性化に職員だけでは覚束ないと判断したのだろう。自治体職員の能力が会社員よりも劣るわけではないが、予算消化型の制度に基づく業務運営は、市場原理で運営される領域には相性が悪い。民間のノウハウが欠かせない。
一方、自治体によって事情は異なるが、町や村など小規模な自治体でマンパワー不足で苦労している部門に保健福祉がある。医療、介護、福祉を所管する部門だが、それぞれの制度変更や、医療、介護、福祉が個別のサービス提供から連携した提供への政策動向に対応しなければならない。
だが、公的介護保険サービスだけでも約25種類。介護事業者でもすべて把握するのは容易でないという。自治体の人事異動は3年ごとが基本なので、新任の職員が医療、介護、福祉の諸制度を把握できるようになった頃に、別の部門に異動してしまう。そんな例もある。
担当職員が5人程度の自治体ではノウハウを蓄積しにくいうえに、住民の高齢化にともなうサービス需要の拡大にマンパワーが追いつかない。民間の助っ人が必要ではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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