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リクルートのオンライン就活セミナー、質疑応答で社員が「サクラ」

リクルートが運営する大学生対象の就職活動に関するオンラインセミナーで、同社の社員が学生を装って質問する行為を繰り返していたことがわかった。社員たちはこうした行為を「サクラ」と呼び、一部では上司が指示するケースもあった。同社は少なくとも20件のセミナーで行われていたことを認め、「不適切であり、大学や学生に不誠実だった」としている。
 同社によるとセミナーは、就活の動向やエントリーシートの書き方などを伝える内容で、学生の参加は無料。大学からの依頼を受けて実施するものもある。  
同社は、オンライン形式に切り替えた後の2021年4月以降、「サクラ」といった言葉を用いて質問を書き込むことを、社内のコミュニケーションツール上で社員が打ち合わせていたセミナーが20件あったことを確認し、関係者に聞き取りもしたという。20件以外でも行われていた可能性について「否定できない」としている。  
セミナーでは質疑応答の際、同社大学支援推進部(現・学生キャリア支援推進部)の社員が「イベントには私服で参加してもよいですか」「インターンシップは何件ぐらい行ったらいいですか」などと書き込んでいたという。
(朝日新聞デジタル 6月4日)

この出来事に対して、リクルートは「昨今の学生向けセミナーがオンライン形式での開催となる中、質疑応 答コーナーにおいて、参加される学生の皆さまが、質問しづらい雰囲気になりがちであったことに対し、質問しやすい雰囲気作りのきっかけとして、過去の代表的な質問をその場に投げかけていた」と報告している。
学生を装った社員は「オンラインのイベントは出入り自由ですか?」「イベントには私服で参加してもよいですか?」などと質問していたという。
動機は理解できなくもないが、引っかかるのは、20件のセミナーで、社内で公然と「サクラ」という言葉を用いて上司と部下が打ち合わせをしていたことだ。このやりとりに、昭和の時代から連綿と継承される同社の社風である「ノリの良さ」を感じ取れる。
 ときにノリは勢いにもなるが、軽佻浮薄な一面があるだけに、社会感覚のズレをもたらしかねない。ズレた社会感覚はコンプライアンスなど受け入れない。かみ合わないのだ。
久しぶりに「昔からのリクルート」がよみがえった出来事である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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