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看護職員の賃上げに関わる財政支援を要望 日看協

 日本看護協会は 5 月 29 日、日本看護連盟と連名で、岸田文雄首相に、医療機関等の看護職員の賃上げを可能とする財政支援に関する要望書を提出した。 医療機関、介護保険施設等は、公定価格 (診療報酬・介護報酬等)で運営され、諸物価高騰の直撃を受けても価格に転嫁できず、看護職員の賃金引上げを行いたくても原資が無い状況である。また、令和 4 年度診療報酬改定では、「看護職員処遇改善評価料」が新設されたが、全ての看護職員が対象となっていない。
要望事項は①物価高騰に苦しむ医療機関、訪問看護事業所、介護保険施設・事業所等の経営を支援し、すべての看護職員の処遇改善が可能となるよう、必要な財政措置を講じられたい②令和 6年度診療報酬改定において「看護職員処遇改善評価料」の対象をすべての看護職員に拡大するとともに、介護報酬、障害福祉サービス報酬改定において同様の措置を講じられたい。
(日本看護協会作成ニュースリリースを要約 5月30日)

公定価格で経営している医療機関と介護施設は、物価高騰に見舞われてもサービス提供価格を値上げできない。北海道では施設内駐車場の氷結を防ぐためロードヒーティングを使用する例が多いが、電気料金の高騰で毎月の光熱費が大幅に膨らんだという。
2024年4月には診療報酬と介護報酬の同時改定が実施される。物価高騰を踏まえて、いずれもプラス改定になるだろうが、賃上げ分までカバーできるかどうか。
看護職員処遇改善評価料は、地域で新型コロナウイルス感染症に 係る医療など一定の役割を担う保険医療機関に勤務する保健師、助産師、看護師及び准看護師の賃金を改善するための措置を実施することを評価した報酬である。
2022年10月以降、収入3%程度(月額平均 1万2000 円相当) 引き上げるために導入されたが、報酬の対象となる看護師の勤務先は①救急医療管理加算に係る届出を行っている保険医療機関であって、救急搬送件数が年間で200件以上であること②「救急医療対策事業実施要綱」に定める「救命救急センター」「高度救命救急セン ター」「小児救命救急センター」を設置している保険医 療機関であること――いずれかの要件に該当すること。
慢性期病院やクリニック、介護施設などに勤務する看護師は支給の対象外だが、社会保障財源の抑制政策を踏まえれば、全ての看護師を対象に加えることには至らないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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