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定年社員、ドライバーに再雇用 「2024年問題」で検討 吉野家

牛丼チェーンを展開する「吉野家」(東京)が、定年を迎えた社員を食材配送トラックの運転手として再雇用する制度を検討していることが18日、分かった。
 ドライバー不足の懸念が強まる「2024年問題」に対応するとともに、従業員の再就職先確保にもつなげたい考え。既に実証実験を始めており、規模を拡大させた上で本格導入の可能性を探る。  
実証実験は1月から大阪府で実施。60歳で定年を迎え嘱託社員として再雇用された3人が、2トントラックで物流センターから「吉野家」などの4店舗に食材や備品を届けている。3人は1台のトラックを使った交代勤務で、月の勤務日数は20日間。来年中にトラックを3台に増やす計画だ。  
トラック運転手には、改正労働基準法の施行で24年4月から時間外労働に上限が課される。ドライバー不足が深刻化して物流が滞るリスクが指摘されており、企業の間では共同配送や1日の配送回数を減らすといった動きが広がりつつある。  
ただ、吉野家は品切れを起こさないために、一定のドライバーを自社で確保する必要があると判断。定年社員を再雇用した上で、近距離の配送を一部担わせる制度の検討を始めた。
(時事通信 4月19日)

2024年にドライバー不足によって、どんな事態が引き起こされ得るのだろうか。
国土交通省が運営する持続可能な物流の実現に向けた検討会は、今年2月に中間報告をとりまとめて、3つの事態を懸念した。
第一にドライバーの拘束時間の減少である。とくに長距離輸送を行う業者では長時間労働が発生しやすいので、今までどおりに運べなくなる。もしくは法を順守した経営を行うのが困難な状況になると予想される
第二に、売上・利益の減少である。1日に運べる荷物の絶対量が少なくなり、利益の減少につながる。運賃を上げれば価格競争に敗れて顧客離れが起こる恐れがあるため、安易に値上げすればよいというわけではない。
第三にドライバーの収入減少である。 残業時間が規制されれば、その分ドライバーが受け取れる残業代も少なくなり、十分な収入を得られなくなって生活が困窮する恐れがある。収入減少による離職が起これば、人材不足に陥る可能性もある。
さらに30年度までの物流需給ギャップを推計すると、ドライバー不足により30年には輸送能力の19.5%が不足し、2024年問題の影響と合わせて、輸送能力の34.1%が不足する可能性もあると予想する。
こうした事態を踏まえれば、吉野屋のように自前の物流体制の構築に向かう動きも出てくるだろう。自社でコントロールできない課題は、コントロールできる体制に切り替えなければならない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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