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技能実習は廃止、政府が提案 国内での「人材確保」明記した新制度へ

外国人が日本で学んだ技能を母国に持ち帰ることを目的とした「技能実習制度」について政府は10日、日本国内での「人材確保」と「人材育成」を目的にした新制度に改める案を有識者会議に示した。実習生が日本の人手不足を補う労働力になっている実態に即した見直しで、30年続く現行の技能実習制度は「廃止する」と打ち出した。別の企業への転籍を原則認めないという、人権侵害を招く温床だった制限も緩和する。
 一方、人手不足の分野で外国人を労働者として正面から受け入れる「特定技能制度」には組み入れず、特定技能にキャリアアップするための「人材育成」制度と位置づける。
1993年に始まった技能実習制度は、実習生になる際に技能水準は求められない。86職種で最長5年働くが、開発途上国への技能移転という目的と、日本の労働力になっている実態が乖離(かいり)してきた。多額の借金を抱えて来日する人が多い中、転籍は原則できず、賃金未払いや暴行などの人権侵害も絶えなかった。  
特定技能制度は2019年に導入された。特定技能1号では、一定の専門性を持つ外国人労働者が、人手不足の12分野で最長5年働き、転籍もできる。
(朝日新聞デジタル 4月10日)

ようやく技能実習制度の改革が動き出す。まさに“ようやく”である。国際的には奴隷制度と指摘されて久しい制度で 改革をこれ以上先延ばしすれば、改革の外圧が発生しかねない。
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議は、制度の趣旨を従来の「
人材育成を通じた国際貢献」から「人材育成機能は維持するが、人材確保も制度目的に加え、実態に即した制度とする」と提案した。これでスッキリする。
人材確保が目的なら技能実習生にとっては就職である。就職なら転籍も自由でなければならない。有識者会議が実施したヒアリングでは、次の意見が示された。
「憲法で職業選択の自由が保障されていることを踏まえれば、一切転籍が認められないことは課題があると考える。一方で技能修得のためには、一定期間、同一の実習先で実習することも必要である」
 有識者会議が提案した転籍の在り方は「人材育成に由来する転籍制限は、限定的に残しつつも、制度目的に人材確保を位置づけることから、制度趣旨と外国人の保護の観点から、従来より緩和する」という内容である。緩和の基準が今後の議論の焦点だ。
 監理団体をはじめとする関連団体の在り方も俎上に載せられた。①監理団体や登録支援機関は存続した上で要件を厳格化するなどして監理・支援能力の向上を図る②外国人技能実習機構は存続した上で体制を整備して管理・支援能 力の向上を図る③悪質な送出機関の排除等に向けた実効的な二国間取決めなどの取組を強化する――などが提案された。
 ただ、制度を改革しただけでは諸問題は解決しない。肝心なのは適正な運用である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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